セレニティー:平穏の海

セレニティー:平穏の海 “Serenity”

監督:スティーヴン・ナイト

出演:マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ダイアン・レイン、
   ジェイソン・クラーク、ジャイモン・ハンスゥ、ジェレミー・ストロング

評価:★




 プリマスという名の透明な海に浮かぶ孤島。巨大マグロ一本釣りへの主人公の執念。状況を見張る謎のメガネ男。「スケジュールが20秒ずれている」との言葉。やたら飛び交う大金。ドラマティックなカメラの動きと唐突な編集。『セレニティー:平穏の海』はツイストに向けて謎を散りばめる。その際の現代ノワール的ムードは悪くない。悪いのはツイストがバカバカしいこと、これに尽きる。

 映画は結末が全てではない。全てではないけれどしかし、それが全てを台無しにすることもある。どんでん返しに驚いて欲しいのだろう。ところが、得意気に提示されるそれは、映画においては度々見かける類のそれであり、よほど巧みな演出を伴わないと、愚かしさしか残らない。殺人鬼は二重人格だったとか、主人公が犯人だったとか、全ては夢だったとか…に通じる、ミステリーの禁じ手に近いものだ。

 もしかしたら物語の全容に切なさを感じて欲しかったのか。実は物語は当初から何か変だと感じさせる場面が多々あり、中盤にはその全容のほとんどが露わになる(ばらされると言い換えても良い)。おそらくそれゆえに見えてくる、主人公と彼と縁深いある人物の関係に、エモーショナルなものを見つけて欲しいのだ。しかし、主人公が思い通りにならない人生に困惑するだけでは、それを読み取るのは不可能に近い。

 せっかく力の俳優たちを集められたのだから、正統派のミステリーにするべきだった。マシュー・マコノヒーは美しい島で漁師をしている。そこに元妻アン・ハサウェイが現れ、暴力を振るう今の夫を殺して欲しいと依頼する。果たして計画は成功するだろうか。マグロ釣りを生き甲斐にしてきた男の人生が狂い出す。ひょっとするとアルフレッド・ヒッチコック映画的気配を獲得できたかもしれない。それは言い過ぎでも、良くできたB級映画にはなったかもしれない。

 美しい景色の中で困惑するマコノヒーの画がフィルムノワールを導く。海の底を及ぶサメやマグロも思いがけず明るいノワールの世界に貢献、マコノヒーをサポートする。ただ、一向にマコノヒーの心情に寄り添う気持ちにはなれない。その心象に現実感がないからだ(ある意味、狙い通りなのだけど)。この世界で最も印象的なマコノヒーは、無駄脱ぎによる鍛えられた身体のアピールだ。もう一歩で筋肉バカの穴へ堕ちそうだ。

 しかしまあ、マコノヒーはバカに見えるくらい、我慢すべきかもしれない。圧倒的な透明感のある空気の中で、ハサウェイやダイアン・レインとイイコトできるのだから。ただ、それにしては美女ふたりとの掛け合いにエロティックな匂いはほとんどない。喘ぎ声があろうと、マコノヒーが尻をやたら見せようと、だ。あぁ、それも演出なのか。生々しさはここでは正義とはならない。やはり映画の仕掛けが全てを台無しにする。





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