真実

真実 “La vérité”

監督:是枝裕和

出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、
   リュディヴィーヌ・サニエ、クレマンチヌ・グレニエ、マノン・クラヴェル、
   アラン・リボル、クリスチャン・クラーエ、ロジェ・ファン・ホール

評価:★★★




 是枝裕和がフランス、パリで撮る。いちばんの興味はカトリーヌ・ドヌーヴやジュリエット・ビノシュを是枝カラーの画面にどう溶け込ませるのかという点だ。日本独特の空気を画面に捕らえる是枝の技が炸裂すれば、見たことのない画が展開されるのではないか。ところが、そうして出来上がった『真実』の画に是枝の匂いはほとんどしない。どこを切ってもおフランス映画。オリヴィエ・アサヤスあたりの気配が濃い。少々肩透かし、だ。

 そして、テーマという点においてもこれまでの是枝映画と大分感触が違う。これまで同様、「家族」がモチーフになっていることは間違いないものの、主役家族の間に流れる問題は意外なほど深刻ではなく、これならばご近所さんにごろごろ転がっていそうなレヴェルのそれに留まる。母親と娘の間のしこり。特別さはまるでない。

 ただし、母娘を演じるのはドヌーヴとビノシュなのだ。とりわけドヌーヴが母親に扮している意味は大きい。この母親はフランスの大女優という設定であり、となるとどれだけ否定してもドヌーヴ本人と役柄を重ねてしまうからだ。果たしてドヌーヴは「あなたのDNAを受け継いでいる女優はいますか」という問いかけに、「フランスにはいないわね」とシラッと答えるのだ。

 そう、この映画はドヌーヴのアイドル映画として見るのが正しい。ヌーヴェルバーグと共に現れた60年代から常に第一線に立ち続けるドヌーヴが体現する女優のあり方が魅力的で、ドヌーヴを眺めているだけで幸せ…という瞬間が何度も訪れる。インタビュー中のタバコや外出時に欠かせないヒョウ柄のコート、口から次々飛び出す毒入りセリフ。ドヌーヴ様、サイコー。

 ドヌーヴもノリノリで演じているものの、決してセルフパロディにはしない、女優然とした空気だけは譲らない。自伝本の嘘を咎められた際、「良い母親で下手な俳優よりはマシ。あなたが許してくれなくてもファンは許してくれる」と言ってのける様は、いっそ清々しい。私生活と仕事の境界など気にしない、もはや常に女優であり続けるドヌーヴならではの説得力。是枝が彼女の横顔を執拗に撮るのも見逃せない。

 結果この映画、是枝色は強くないし、日本の香りもないに等しい。けれどその分、非常に軽やかだ。冬のパリの木漏れ日を掴まえたような空間の中、ドヌーヴやビノシュ、イーサン・ホークが軽やかなステップを踏んでいる。言い合いの後には花が咲く。辛辣な言葉の後ろの空気が心地良い。演技の奥にはハートが顔を出す。たまにはこんな映画もイイ。





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