アド・アストラ

アド・アストラ “Ad Astra”

監督:ジェームズ・グレイ

出演:ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズ、リヴ・タイラー、
   ルース・ネッガ、ドナルド・サザーランド

評価:★★




 ジェームズ・グレイ映画の画面はいつも静かだ。月明りで照らしているかのようにほの暗く、息する音が毛穴に入り込んでくるような気配がある。『アド・アストラ』でグレイが手掛けるのはSFで、なるほどもしかしたら果てしなく広がる宇宙の気配は、グレイ映画のそれと相性が良いのかもしれない。期待を抱く。

 果たして、宇宙描写が素晴らしい。「ゼロ・グラビティ」(13年)「インターステラー」(14年)に続けとばかりに無重力描写は、視覚効果と役者の肉体が美しく共鳴、静のダンスのような匂いがある。宇宙の静寂は音の一音一音をくっきりと伝える。宇宙船内部の美術や地球以外の星もそれらしい説得力を持つ。なるほど、宇宙だ。

 ヴィジュアルの面白さはしかし、物語の面白さに繋がらない。もう20年以上前にミッション中に消息を絶った父親を探しに宇宙へ向かう息子の物語。父親との交信が途切れた理由。父親の生死。息子と父親の再会がもたらすもの。地球への帰還ミッション。SFらしく壮大に広げられたものの数々が、ことごとく予測の範囲内のそれに収まる。

 いや、収まっても良いのだ。ベタでも先が読めても面白いものは作ることができる。問題は、テレンス・マリック症候群とでも言えば良いか、或いはクリストファー・ノーランの呪いと言っても良いか、とにかく哲学的な思考の数々、シリアス至上主義の徹底が退屈を生んでいる点だ。ただでさえ抑揚のつけ方に弱さが見られるグレイ映画なのに、起伏が全く感じられないのだ。退屈に芸がないと言い換えても良い(稀にだけれど、映画の世界には「魅惑的な退屈」というものも存在する)。

 主人公の魅力が分からない。息子を演じるブラッド・ピットは大変な事態でも心拍数が上がらないほど落ち着いた人物で、なるほどそういう人こそ宇宙飛行士向きなのかもしれない。けれど、宇宙を旅すればするほど、彼が迷い込むのは己の心の宇宙だ。彼は問い掛け続ける。父への想い、旅の意味、己の人生。当然旅の過程で陥る窮地もテキパキ的確にこなす。

 それでも見るべき点はある。父と息子の対比とそれぞれが選ぶ結末は考えさせる。また、終幕に全てを悟ったかのような表情を浮かべるピットの佇まいも悪くない。おそらくここに足りないのは、はったりだ。SFに足を踏み入れながら現実から逃れられない。その息苦しさに支配されている。思わず世界がひっくり返るような不敵さの中でこそ、生きる題材ではないか。





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