アス

アス “Us”

監督:ジョーダン・ピール

出演:ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、エリザベス・モス、
   ティム・ハイデッカー、シャハディ・ライト・ジョセフ、
   エヴァン・アレックス、カリ・シェルトン、ノエル・シェルドン

評価:★★★★




 物語はドッペルゲンガー・ホラーとして始まる。休暇先の別荘の真夜中、自分たちそっくりの家族が現れ、襲い来るのだ。顔・身体が本人そっくりだけでも気味が悪いのに、赤い服と呻くような声、手繋ぎの組み合わせが異様な気配を極める。ジョーダン・ピール監督は外観を作り込む。

 そう、『アス』はピール映画なのだ。「ゲット・アウト」(17年)では監禁ホラーに見せかけて人種問題の根深さを暴き出したピールが、単純明快、見かけ通りのホラーを手掛けるはずがない。ヒロインのドッペルゲンガーが序盤に話す昔話でピンと来る。この映画は今という時代に(とりわけアメリカに)横たわる格差社会のメタファーだ。

 それは収入格差という分かり易いものだけではない。愛を受ける者と愛を知らぬ者。家族を知る者と孤独に生きる者。日の当たる場所に生きる者と影に追いやられて生きる者。様々な対比がホンモノとドッペルゲンガーの間に浮上する。だからと言って道徳を踏み越えて良いわけはなく、でもだからこそ話が多角的に見えてくる。「分断」が立体的に迫る。

 ヒロインは幼少時にもドッペルゲンガーに会っていて、それが心の傷として残る。だから一見、ヒロインがトラウマを克服する正統派の匂いもある。愛する夫と子どもたちを守るため立ち上がる、美しき母の画が強い印象を残す。ルピタ・ニョンゴは汗と血に塗れながら、己の中の闇に向き合いながら、窮地を突破する。カッコイイ。

 カッコイイのだけれど、どこか引っ掛かりを覚えてしまうのがポイントだ。自分たちを守りたいと思うのはドッペルゲンガーも同じで、その魂の叫びやそれと密着した振る舞いの向こうがちらつくに連れ、ホンモノとドッペルゲンガーの境界がぼやけていくのが大きな意味を持つのだ。ドッペルゲンガーの襲来に革命性が宿ると言い換えても良い。そうしてクライマックスに明かされる真実は、アイデンティティーにまつわる問題を炙り出す。誰もが物語を最初から見直したくなるだろう。

 格差社会を反映させる物語をいつしか自我の問題に変態させていくあたり、ピール映画は脚本に旨味たっぷりだ。ただし、それだけではない。耳に残る音楽やリズミカルなカメラワークは相変わらずだし、恐怖の中に顔を出す笑いも楽しい。幼少時を描くプロローグからドッペルゲンガー登場、続いて友人宅への避難、そして最終決戦と舞台を次々移す際の、優雅な語りのペースも絶妙と言える。また、ドッペルゲンガー登場前、砂浜を歩く家族を俯瞰で捉えたショットは、ホンモノよりもその影がくっきり見える画であり、妙に頭にこびりつく。画面作りが圧倒的に優れているのだ。





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