荒野の誓い

荒野の誓い “Hostiles”

監督:スコット・クーパー

出演:クリスチャン・ベール、ロザムンド・パイク、ウェス・ステューディ、
   ジェシー・プレモンス、アダム・ビーチ、ロリー・コクレイン、
   ベン・フォスター、ティモシー・シャラメ、ポール・アンダーソン、
   ジョン・ベンジャミン・ヒッキー、スティーヴン・ラング、ビル・キャンプ

評価:★★★




 西部開拓時代、クリスチャン・ベールが重要人物を「護送」するのは初めてではない。「3時10分、決断のとき」(07年)では無法者に扮したラッセル・クロウを護送しているのだ。あれからまだ10年しか経っていないのに、その間のベールの躍進はそれはそれは目覚ましい。あの頃の精神的な線の細さは完全に消え、今やハリウッドを代表する超演技派だ。感慨深い。

 『荒野の誓い』は護送物の魅力と同時に、西部劇の醍醐味も詰まっている。圧倒的スケール感で迫る砂埃舞う大地。鬱蒼と茂る木々と降り注ぐ光のコントラスト。乾いた音で響き渡る銃声。そこに被さるユニークな音楽。生と死が隣り合わせの中で、人間はその小ささを自覚し、けれどそこに立ち止まってはいられない。苛烈な環境がいっぱいに広がる。

 ただし、西部劇特有の勧善懲悪の世界観は見当たらない。そしてそれこそがミソだ。引退が迫る主人公ジョー・ブロッカー大尉には今で言うPTSDの匂いがある。仕事としての人殺しがその心を蝕んでいる。彼は自分の中に蠢く違和感を受け入れられない。ベールが見せるのはそこだ。そのためお馴染みの背景である白人とネイティヴ・アメリカンの対立が効果的に働く。

 大尉が担当する護送任務の最重要人物は、友の敵であるシャイアン族の首長(イッセー尾形のような風格を漂わせるウェス・ステューディ)だ。憎き相手との間に対立とは趣を異にする連帯感が生まれるのはお約束でも、ベールの中で怪物化寸前の憎しみが形を変えていく様は、名優の詩情豊かな演技のおかげもあり、実に胸に迫る。

 この世界にロザムンド・パイクを放り込むのは正しい判断だったのかは若干迷うところ。パイクは夫と三人の子どもをコマンチ族に惨殺された、絶望に支配された女だ。彼女が護送についていくことになり、その心に癒しを見つけていくのが甘ったるく感じられなくもない。ただしパイクが見せる本物の絶望は大変な迫力で、彼女と大尉の間に芽生える何かも、ちゃんと直の匂いがある。

 結末はどうか。護送の成功失敗云々ではなく、命というものの重みが強烈にせり出してくるそれであり、さすがに気が滅入ると思うのが半分、命への真摯な向き合い方に感心するのが半分…と言ったところ。ちょっとテレンス・マリック映画風の気配が立ち込める。もちろんベールは、その気配を自分の肌に難なく馴染ませている。





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