ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド “Once Upon a Time... in Hollywood”

監督:クエンティン・タランティーノ

出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、
   エミール・ハーシュ、マーガレット・クアリー、ティモシー・オリファント、
   オースティン・バトラー、ダコタ・ファニング、ブルース・ダーン、
   アル・パチーノ、マイク・モー、ダミアン・ルイス、ルーク・ペリー、
   カート・ラッセル、クリフトン・コリンズ・ジュニア

評価:★★★★




 10本作品を撮ったら映画監督からの引退を表明しているクエンティン・タランティーノだから、思わず呟いてしまう。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が10本目だったか?実際は9本目に当たるのだけれど、それくらいこれはタランティーノの映画愛が炸裂した作品だ。舞台となる1969年はウッドストックが開催されアポロが月に降り立ち、そしてハリウッド黄金期が終わりを迎えようとしていた時代だ。タランティーノは6歳。おそらく既に映画少年だったタランティーノの記憶が映画の夢と華麗なるダンスを繰り広げる。

 タランティーノの愛を体現するのは三人の重要人物だ。レオナルド・ディカプリオ扮する落ちぶれた西部劇スター。ブラッド・ピットはそのスタントマン兼相談役として食い繋ぐ。新進女優シャロン・テートに扮するのはマーゴット・ロビーだ。なるほどタランテイーノの彼らに対する愛情が画面の至るところに滲み出る。

 そうだった。タランティーノはヴァイオレンスと一緒に語られることの多い映画人だけれど、基本夢を信じる人だ。そして一度堕ちた人に手を差し伸べられる優しさを持った人だ。そしてインスピレーションの源となる人を目一杯讃える人だ。過去の人扱いされるディカプリオに、それ以上の困窮なのに文句の一つも言わないピットに、後に悲惨な運命が待ち受ける悲劇のミューズであるロビーに…タランティーノは愛を惜しまない。

 だから、タランティーノと同じように映画を愛する人には、ハートが暖かなもので満たされたり、切なさに苦しくなったり、これ以上ないカタルシスに包まれたりと、忙しい場面の連続だ。例えばディカプリオが敏腕プロデューサーに現状を突きつけられる場面。或いはピットがマンソン・ファミリーの住処で不穏な気配を感じる場面。また或いはロビーが自身の出演作に対する観客の反応に喜びを隠せない場面。一流の映画術(とりわけ撮影と編集の呼吸!)も手伝い、もはや画面そのものが興奮を隠せない状態だ。映画に血が流れている、そう感じさせる画が次から次へと登場する。

 スターの魅力を引き出すことに長けるタランティーノは、主役を務める三大スターを輝かせることにも抜かりなし。ディカプリオとピットが同じ画面に入る、その圧倒的華やかさだけでも相当なものだけれど、ディカプリオがピットの肩で泣いたり、一緒にテレビを観たり、その間に熱い情を感じさせたりと、なんて忙しい。カラフルなボーダーシャツとカットオフデニム、黒白コーディネートにホワイトブーツといった当時のファッションに身を包んだロビーは、映画の魂として街をエレガントに闊歩する。三人とも、もうサイコー。

 そして、あの事件を避けては通れない。そう、これはマンソン・ファミリーによるシャロン・テート殺害事件をどう描くか、タランティーノの回答でもあるのだ。ただ、事件があまりにも悲惨であるがゆえ、直視したくない気持ちも否定できないわけだけれど…あぁ、タランティーノはタランティーノだった!もちろんタランティーノ印のヴァイオレンスが降り注ぐ。血は流れる。炎に包まれる。当然そこには恐怖がある。…それにも拘らず、最後に広がるのは、映画と映画を愛する人への敬意と優しさなのだから。誰もがディカプリオに喝采を贈るだろう。ピットに惚れない女も男もいないだろう。ロビーの声に落涙は禁じ得ないはずだ。おっと、ピットの愛犬ピットブルテリアのブランディにはご褒美のドッグフードをお忘れなく。





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