世界の涯ての鼓動

世界の涯ての鼓動 “Submergence”

監督:ヴィム・ヴェンダース

出演:ジェームズ・マカヴォイ、アリシア・ヴィキャンデル、
   アレクサンダー・シディグ、ハキームシェイディ・モハメド、
   レダ・カテブ、ケリン・ジョーンズ

評価:★★




 男はソマリアで過酷な任務が待つMI6諜報員。女はグリーンランド深海での探査が控える海洋生物学者。そのふたりがノルマンディーの美しい海岸で出会う。これだけ舞台が揃っているのにメロドラマにならないのが、ヴィム・ヴェンダースだ。褒めていない。

 いっそメロドラマにしてくれた方が良かった。ヴェンダースは元々物語を語るタイプの作家ではない。最も大切にされるのは世界観の構築で、その細部を探ることで唯一無二のものを目指してきた。ところが近年は、そうして並べられるイメージが決定的に、薄い。

 『世界の涯ての鼓動』の男女の世界は、そもそもが全く異なる。人は誰もが己のサークルを持っている。そしてその中で生きるものだ。そのサークルが何かのきっかけで重なり合ったとき、別の世界が顔を出す。ヴェンダース映画を観ていると、そこのところは良く分かるものの、どういうわけだか漏れなく自己愛がついてくるのだ。薄いイメージの中、己の人生に酔っているように見えるのだ。

 大体ノルマンディーでの5日間が大して魅力的ではなかったりする。ジェームズ・マカヴォイとアリシア・ヴィキャンデルだから微笑ましい見た目には違いないのだけど、そのいちゃこきの数々に他愛なさ以外のものがなく、ゆえにそれを生涯の恋と思い込むのは浅はかというもの。時に政治的・科学的・哲学的問答を挟んだ、「マディソン郡の橋」(95年)的陶酔型世界。

 ふたりが別れ、それぞれの任務地で展開する話も、観念的なそれに終始。別の世界を見つけてしまったふたりの心の旅というものが、やはりイメージ勝負の空間を彷徨う。ふたりは遠い地の互いを見ているようで、その先で笑う自分を眺めている。勝手にどうぞ、としか言えない。

 それにそもそもヴェンダースは男女の精神世界などさほど興味がないのではないか。深海云々の科学的な部分もしかり。おそらくヴェンダースが最も興味を抱いているのは、ソマリアの地に蔓延る厳しい現実、不条理、そして無力というやつで、それを見せたいがためにこんな箱を用意したように思える。目指す方向があやふやになったのも当然ではないか。





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