ツーリスト

ツーリスト “The Tourist”

監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョニー・デップ、ポール・ベタニー、
   ティモシー・ダルトン、スティーヴン・バーコフ、ルーファス・シーウェル、
   クリスチャン・デ・シーカ、アレッシオ・ボーニ、ラウル・ボヴァ

評価:★★




 冗談のような映画である。何しろ主演がアンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップ。監督がドイツ映画「善き人のためのソナタ」(06年)で堂々たる演出力を見せたフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。舞台は世界一絵になる街ヴェネチア。列車内での素敵な出会い。宿泊先は高級ホテル。ボートに乗って水上デート。ドレスアップした舞踏会ではダンスも披露。この水の都で男女が警察に追われ、ギャングに追われ、恋に落ちる。ワーオ、ホント何から何まで冗談みたい。冗談を夢として見せてくれるのが映画のはずで、そしてこの条件ならそれも容易なように思えるのだけど、どっこいそうならないのがもどかしい。

 紛れもなくスター映画である。ただし、デップのスター性はほとんど引き出されていない。彼が演じるのは、所謂平凡な男。別の男に間違われてアタフタしているだけの役柄だから、仕方がないと言えば仕方がない。そもそもデップは変人を演じれば演じるほどに輝くタイプの役者で、普通の男に扮する途端に精彩を欠く。いつもより太めで、だらしなくヒゲが伸びて、遠慮がちに女に接近してイライラを誘う。パジャマ姿でヴェネチアを走り回る場面に驚く。足が短くて。

 デップが冴えない分、ジョリーが魅せる。グラマラスな魅力を全編に渡って振り撒く。特に衣装が見もので、素材の滑らかさもデリケートな露出加減も絶妙。ただし、メイクは似合っていない場面もあって、目指した魔性が不発に終わっているところがあった。唇のぼってりしたところはジョリーの大きな武器だけれど、色を間違えると品がなくなるから注意が必要だ。ジョリーが男たちを振り回す様は、堂に入っている。列車の中でデップの名前を聞いたときのジョリーの返答が可笑しい。「平凡な名前ね」。しかもこれ、ある伏線になっている。

 ドナースマルクの失敗は「謎」の落とし方にあるだろう。「謎」が持つ引力をまるで無視、次々分かりやすく情報を入れていく。警察が追っている者とその正体、ギャングの目的、何よりジョリーが愛する男のために「行動」に出ているという点が丸見えゆえに、話の引力がガクッと落ちている。見せない工夫、教えない工夫というものがないがゆえ、コメディもスリラーも盛り上がらない。そして呑気にも、デップに「君のような人に会うのは初めてだ」なんてバカなセリフを言わせてしまう。ロマンスさえも見たままにしか刺激されないとはこれいかに。

 夜霧の中のボートチェイスは見せ場のはずだけれど、なんて微笑ましいのだろう。水上でスピード感を出すのは難しいというのは常識で、それなのに特別な工夫を一切することなく、追いつかれたらどうしようという緩いサスペンスに頼っている。オママゴトじゃないんだから。主人公、ギャング、警察によるクライマックスの駆け引きは、ホントもうどうしようもない。いや、駆け引きが成立していないと言った方がいいか。明かされるある事実も「やっぱりか!」と口に出てしまうほど見え透いている。矛盾だらけなんだけど。

 おそらく「北北西に進路を取れ」(59年)のような巻き込まれ型の名作のセンを狙ったのだろう。アルフレッド・ヒッチコック映画を参考にしたように見えるところがチラチラ。ただ、意識するだけではニセモノのままで終わってしまう。物語と人物に真実味が与えられず、遂には仕上がりが冗談になってしまった。スターのおかげで退屈しないと、生温くホッとしている場合ではない。





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