ワイルドライフ

ワイルドライフ “Wildlife”

監督:ポール・ダノ

出演:キャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール、
   エド・オクセンボウルド、ビル・キャンプ、
   ゾーイ・マーガレット・コレッティ、ダリル・コックス

評価:★★★★




 ポール・ダノはあの風貌だし、出演映画の多くはコメディだし、すっ呆けたイメージがある。だから当然監督作も喜劇になるだろうと踏んでいたのだけれど、これがどっこいかなりのシリアスさだからべっくらこく。『ワイルドライフ』は仲が良かった家族の関係が壊れていく様を見つめる。原作があるらしいけれど、ダノ自身の記憶も投影されているに違いない。

 物語はいたってシンプルだ。モンタナの田舎町に越してきた家族が主人公。慎ましくも幸せだった家庭が、父の失職をきっかけに壊れていく。プライド、逃避、山火事、不倫、無力、無気力…家族の崩壊を14歳の息子の目線で描くのがミソだ。どんな子どもでもこの世でいちばん見たくないものは、父と母の諍いだからだ。

 少年は家族の崩壊を成す術なく目撃しながら大人に近づいていく。ここに言葉以上の衝撃がある。…と言うのも、家族の崩壊はそのまま、父と母が男と女であるという事実を生々しく突きつけるものだからだ。ダノはその居心地の悪さから目を背けない。じっくりと舐めるように映す。息子は完璧に揉まれる。

 家族崩壊の風景にヨーロッパ映画、それも北欧映画の気配を感じるのは気のせいだろうか。冷徹な眼差しは無闇に動かないカメラ、細部まで丁寧な衣装(母のそれがさり気なくオシャレ)、外との寒暖差を感じさせるインテリア、言葉少なに確信を突いたセリフ等に導かれる。慌てず、取り乱さず、冷静に現実が差し出される。

 とりわけ母を演じるキャリー・マリガンの演技に息を呑む。不倫・裏切りというネガティヴな方向に転げ落ちながら、しかしどこか逞しさを感じさせる佇まい。開き直りとも違う、目に見えない力。どこかダノを思わせる息子役のエド・オクセンボウルドとの関係が時折、変な意味ではなく女と男のそれに見えるのは、マリガンの息遣いまで本当らしい存在感あればこそ。

 さて、ヨーロッパ映画を思わせると言っても、冷徹なだけではない。ヨーロッパ映画なら家族が崩壊し切ったところで切り上げるだろう話の先に、さらなるエピソードを追加、これが何ともまあしみじみと良い味なのだ。息子のアルバイト先が写真館であることが効いてくる。ラストショットなど、この家族の現時点でのそれぞれの距離感を絶妙に切り取る。余白の取り方といい、冴えた構図といい、趣味良い風景や美術といい、逃れられない田舎の退屈の匂いといい、ダノが監督としてもタダモノではないと良く分かる。今度は、いや今度こそ、喜劇を是非。





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