アレクサンドリア

アレクサンドリア “Agora”

監督:アレハンドロ・アメナーバル

出演:レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック、
   マイケル・ロンズデール、サミ・サミール、アシュラフ・バルフム、
   ルパート・エヴァンス、ホマユン・エルシャディ、オシュリ・コーエン

評価:★★★




 恥ずかしながら、ヒロインのヒュパティアについては全く知識がないのだけれど、『アレクサンドリア』の第一の魅力が彼女の人物造型にあることは間違いない。哲学者、数学者、そして何と言っても天文学者であるヒュパティアは、「男よりも学問が好き」という女で、それを決して崩そうとしない。作中、彼女が唯一見せるラヴシーンは、横になり、空を見上げ、それに向かって手を伸ばす場面なのだ。そして、そんなところが愛しく、色っぽく見えるのが面白い。頭でっかちで退屈な女では断じてない。

 演じるレイチェル・ワイズの力が大きいだろう。久しぶりにワイズの意志的な眼差しが強烈な威力を発揮している。ローマ帝国末期のアレクサンドリア、新興勢力であるキリスト教が存在感を増し、多くのユダヤ教徒が改宗を余儀なくされる変化のとき。それでも彼女は絶対に信念を曲げない。そういう芯の強靭さと、そして人間的な柔軟さが優しく溶け合っていることが滑らかに伝わってくる目だ。ワイズの軸となる部分が揺るぎないがゆえに、チープなメロドラマには陥らない。

 ヒュパティアの物語は宗教の激しい対立を切り離しては考えられない。ヒュパティアは何人かの弟子、そして家には奴隷を抱えていて、彼らの宗教的な立ち位置を明確にすることで、宗教問題の流れを分かりやすく見せる策が採られている。最初は宗教を記号化しているようにしか思えず感心しなかったのだけれど、これはもしかしたらアレハンドロ・アメナーバル監督の娯楽的な方向へのギリギリの譲歩ではなかったか。物語が進むに連れて「ユダヤ教 vs. キリスト教」という単純な構図の中には収まらない複雑さが前面に出てくるからだ。「人が人を想う気持ち」、思い切り簡単に言ってしまうと「愛」というものが、宗教の中でどろどろと掴み所のない気配を漂わせ始める。オスカー・アイザックとマックス・ミンゲラが体現する葛藤に迫力がある。これは彼らの物語でもあるのだろう。ミンゲラがキリスト教に傾倒していく過程だけは腑に落ちないものがあるけれど。

 もう1600年以上も前のエジプトが舞台だというのに、既視感を覚えるところが興味深い。ヒュパティアの生き方は現代女性が勝ち取った権利に通じるものがあるし、宗教間の対立構造には今このとき起こっている紛争問題の原点が見える。アメナーバルも時折、宇宙から見た地球のカットを入れて、それを意識させている。時空を超えて浮かび上がるテーマだ。

 衣装や美術も期待通りに見応えがある。豪華絢爛ではないもののゆったりとした衣服は気持ちが良いし、細部まで緻密に創り上げられた建造物にはスケール感がある(特に図書館に胸躍る)。そしてカメラはその魅力をダイナミックに捉えている。場所から場所へ移動する際の開放感のあるカメラワークには興奮する。縦の動きも積極的に取り入れられていて、より一層空間の広がりを感じられる撮り方になっているのが面白い。

 欲を言うと、ヒュパティアが天文学に没頭するエピソードをもう少し見せて欲しかった。彼女が地球と太陽の関係を発見する件の静かな感動には胸をググッと掴まれたからだ。宗教と天文の絡ませ方にもう一工夫必要か。





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