ピアッシング

ピアッシング “Piercing”

監督:ニコラス・ペッシェ

出演:クリストファー・アボット、ミア・ワシコウスカ、ライア・コスタ、
   マリア・ディッツィア、マリン・アイルランド、ウェンデル・ピアース

評価:★★★




 クリストファー・アボット演じる男は、愛する我が子をアイスピックで刺したくなるほどの殺人衝動を抱えている。何ともまあ、悍ましく、救いないヤツだ。けれど、これがどうにも憎めないから困る。アボットの中年らしい容貌の中に放り込まれたアイドル風の瞳のせいだけではないだろう。殺人鬼なりの愛嬌があると言うか何と言うか。

 例えば、獲物として我が子の代わりにSM嬢をホテルの一室に呼ぶ件だけでも相当に可笑しい。几帳面なこの男、クロロホルムの適量を身体を張って確かめるわ、セリフを延々語ってシミュレーションするわ、計画を細かく丁寧な字で記録するわ、秒単位で事を進めるわ…と本番に向けての予行演習に抜かりなさ過ぎる。男の「頑張り」を後押しするかのようにスコアが劇的に鳴り響くのも笑える。

 そうしてホテルに現れたのが、自傷癖・自殺願望のある女というのが運命的ではないか。男は殺したくて、女は死んでしまいたい。利害が一致している。なのに、スムーズな流れにならないのが面白い。ふたりは大きな意味で変態であり、『ピアッシング』は変態と変態が出会ったときの予測不能の顛末を大真面目に観察する。作り手もしっかり変態ということだ。

 男と女の関係にはロマンティック・コメディのそれが適用される。つまり、女の方が一枚上手で、男を「我儘」に振り回すのだ。最初の会話がしっくり来なくてシャワー室に立て籠もると、自分の脚をハサミでぐさぐさ刺し、それを止めようとすると今度は男に襲い掛かる。面倒臭い上に怖いと来た。ミア・ワシコウスカ、その涼し気な佇まいに狂気を愉快に滲ませる。

 男と女の対決が進むに連れ、現実と幻想の狭間が見えなくなってくるのもイイ。妖しいライティングに照らされた部屋が変態的に輝き始める。男の過去にもイメージは飛躍しながら、このふたりに相応しい環境が整えられていく。もう、どこまでも行っちゃって下さい。

 原作は村上龍らしく、どこか日本的な気配が漂うのも気が利いている。スコアが歌謡曲を思わせるのも偶然ではないはずだ。また、街並みがクラフトっぽいのも良い味。作り手がその中の一室を覗き見ているかのようだ。





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