COLD WAR/あの歌、2つの心

COLD WAR/あの歌、2つの心 “Zimna wojna”

監督:パヴェウ・パヴリコフスキ

出演:ヨアンナ・クーリグ、トマシュ・コット、アガタ・クレシャ、
   ポリス・シィツ、ジャンヌ・バリバール、セドリック・カーン、
   アダム・ヴォロノヴィッチ、アダム・フェレンツィ、アダム・シシュコフスキ

評価:★★★★




 物語は1951年、冷戦下のポーランドから始まる。国立の音楽舞踏団の立ち上げに指導者として関わる男ヴィクトルと、それに応募する歌手志望の女ズーラが奏でるラヴストーリー。『COLD WAR/あの歌、2つの心』はふたりの十数年に渡る軌跡を織り上げる。ただ、その詳細をくどくど語りたくはない。野暮な気がするのだ。

 パヴェウ・パヴリコフスキが物語を軽視しているわけではない。むしろ物語こそを何よりも伝えたいと考えている。ただ、パヴリコフスキは過度の装飾を嫌い、男と女が強烈に惹かれ合うその磁力そのものに焦点を当てる。そして、そういう作法の映画の物語の細部を分析的に語るのは酷く無粋に思えるのだ。

 パヴリコフスキはまず、彼らのいる景色をモノクロームで掴まえる。古風でシンプルな話にぴったりの選択だ。柔らかさと細やかさが同居する撮影で、人物の陰影を情緒たっぷりに切り取るばかりか、辛く苦しい状況下にも見えない花々が咲くのだ。普段なら見過ごしていたに違いないその花の数々は、時に街角に、時に部屋の片隅に咲く。人の皮膚の上に見えることもある。単純に美しい。それが重要だ。

 そこに歌が被さる。「2つの心」と名づけられたその楽曲は最初、民族音楽として素朴に歌われる。その魂が男女の恋を包み込む。それで終わりではない。歌い手が変われば、歌はまた別の表情を見せる。ジャズテイストに演奏されることもある。恋の変容は楽曲の変容でもある。それ以外にもハートと密着した楽曲が流れ続ける。その心地良さ。

 そして、そうした環境で動くトマシュ・コットとヨアンナ・クーリグの絵になることよ。並んだ画からしてコットとクーリグにはかなりの身長差があり、一見アンバランスだ。ところがふたりの間には抗い難い磁力がある。強力な電流が流れる。ふたりが愛し合うきっかけは見当たらない。どこに惹かれ合っているのかも説明されない。愛憎激しく、けれどその細胞は探られない。描く必要がないからだ。恋とはそういうものだからだ。…という真理が男女の佇まいに映し出される。

 そして、ここが最重要なのだけど、ヴィクトルとドーラの愛を完璧に見せるのは、編集の技だ。ここには通常世間が恋のクライマックスと呼ぶものの描写がほとんどないのだ。互いが思いの丈を吐き出す場面はない。苦しい恋に咽び泣く場面もない。心と身体が通じ合う歓びに浸る場面すらない。代わりにパヴリコフスキは大胆不敵な編集を繰り返し、話を前のめりに進める。それは余白や行間を大きく取るというのとも違う気がする。編集のリズムと冷戦下に出会った男女の恋のリズムが奇跡的なまでに美しく一致しているということなのではないか。ハートを殺さないまま、物語が高速に燃え上がる快感はそこから来ている。





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