ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた

ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた “Hearts Beat Loud”

監督:ブレット・ヘイリー

出演:ニック・オファーマン、カーシー・クレモンズ、テッド・ダンソン、
   サーシャ・レイン、ブライス・ダナー、トニ・コレット

評価:★★★★




 数多いバンド物映画の中でも『ハーツ・ビート・ラウドたびだちのうた』が物珍しいのは、バンドメンバー構成にある。「父」とその「娘」が音を奏でるのだ。娘が大学進学目前だから、娘が20歳前後、父が50歳前後といったところだろう。もしかしたら多くの父親は娘に毛嫌いされる頃じゃなかろうか。お父さん臭い!お父さんの洗濯物と一緒に洗わないで!あぁ…。

 ニック・オファーマン演じる父親とカーシー・クレモンズ演じる娘はまず、そういう微妙な関係になりがちなところを軽やかに切り抜ける。別段ベタベタしているわけでも、極端に距離ある仲でもない。ただ、彼らは年季の入った父子家庭だ。まるで子どもふたりが肩寄せ合うように生きてきた…というふたり。ちゃんと個と個が向かい合った関係にあり、それゆえ血縁が生み出す余計な煩わしさからは解放される。

 個と個が向かい合う。この際、父の方が精神的に幼さを感じさせるのが可笑しい。娘の方にも恋愛と進学に関する問題が横たわるものの、それは大人の分別で直視される。父の方はと言うと、子離れの時期に来ているのに、未だに夢見がちだ。経営するレコードショップは閉店する。金はない。未来はどこまでも不透明だ。でも父は夢を見る。

 …とそこにふっと沸いて出てくるのが、軽い気持ちで娘と組んだバンドへの期待だ。大の音楽好きの血が騒ぎ出し、バンドに賭けてみたくなる。娘の方は現実的だから、通常のバンド物のようにレコード契約やツアーの成功で盛り上がる!…なんてことはない。けれど、父のその夢がバカにされることもない。夢が持つ力って何だろう。父の楽しそうな顔を見ると、つい考える。それにそもそも、父が娘とバンドだなんて、音楽好きの全父の夢じゃないか。キラキラして当然だ。

 …というわけで、楽曲がやっぱり良い。何事も変わっていく。それが自然であり、いや、変わって行かなくちゃならない。それを見据えた上で生まれた楽曲たちが眩しいこと!父のギターと娘のヴォーカルが素晴らしく共鳴する。クレモンズの声が良く響く。それを見つめる父の目の優しさよ。オファーマンの佇まいに彼がどう生きてきたか、映し出されるみたいだ。この映画は音楽を通して時間を掴まえてみせるのだ。

 この父娘に似つかわしく、演出は万事程が良い。父と娘の肌の色には触れられないし、同性愛も当然のこととして受け止められる。デジタル社会らしくパソコンを使った音作りになっても騒がれることはなく、レコードショップの危機的的状況は過剰に嘆かれない。見渡せばシヴィアな現実はたっぷり注がれているのに、平気な顔をしてそれを見守るのだ。この演出態度が何物にも変え難い宝石を照らすのに、何とも好ましいのだ。





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