サイコ リバース

サイコ リバース “Peacock”

監督:マイケル・ランダー

出演:キリアン・マーフィ、エレン・ペイジ、スーザン・サランドン、
   ビル・プルマン、ジョシュ・ルーカス、キース・キャラダイン

評価:★★★




 多重人格者を取り上げた映画の大半は、スリラーの様式を採ることになる。一見どこにも問題のない人間の中で動く、別の人格。その狂気を掬い取って、周囲の人間が困惑していく様を見つめながら、サスペンスを盛り上げていくのが常だ。ところがこの『サイコ リバース』、そういう定石を敢えて避けているように見える。二重人格と際どいバランスで向き合っている男の内面のドラマにフォーカスを当てて、じっくりそれを見つめていく。

 当然のことながら、主人公を演じる役者が重要になる。ネブラスカの田舎町で銀行に勤める内向的な男ジョンとその「妻」エマ。彼らは互いを攻撃することなく、それぞれの領域を守って生活しているのだけれど、庭に脱線した貨物列車が突っ込んできたことから、その平穏が崩れていく。キリアン・マーフィはこの瞬間から揺さぶられていく人格のバランスを非常に巧く捉えている。ジョンとエマ、どちらかに肩入れするのではなく、どちらも尊重した立ち位置で演技をしている。それゆえそこに緊張が生まれる。この緊張は何も、サスペンスに直結するようなものではない。男の中で静かに動いていく内面の動きに緊張をもたらす類のそれだ。緩やかで、しかしエッジが効いている。演出と演技の解釈が鋭く噛み合っている。

 それにしてもマーフィは女装姿がとても似合っている。元々中性的な顔立ちではあるけれど、それ以上に男の中にある女を巧みに引き出しているのが功を奏している感じだ。声の色も佇まいもしっくりきているし、メイクも自然に馴染んでいる。頬や唇の色、目周りの化粧、ウィッグの装着具合…どれも無理がなく、それどころか微かに色っぽい。「プルートで朝食を」(05年)のときとは違うフェミニンな匂いを濃厚に発している。でもまあ、物語上誰も彼の女装に気づかないというのは、ちょっと無理があるけれど。

 アルフレッド・ヒッチコック監督の「サイコ」(60年)への目配せが散りばめられているのが嬉しい。母親との捩れた関係、モーテルへの避難、孤独な後ろ姿を捉えたショット…等、名作へのウインクが楽しい。少々デヴィッド・リンチ映画の匂いを漂わせているところもある。そういう意味で丸顔のエレン・ペイジは配役ミスだろう。妖艶な空気に溶け込んでいない。

 ところで、つくづく思うのだけれど、眉毛というのは驚くほど人間の印象を変える。終盤マーフィが眉毛を剃り落として、一から眉を作り上げるのだけれど、その際の変貌には目を見張った。それまでよりも妖気を色濃く出していて、それはもう眉毛の形から来ていると言っても過言ではない。男と言えど、眉毛は侮れないのである。





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