ベン・イズ・バック

ベン・イズ・バック “Ben Is Back”

監督:ピーター・ヘッジズ

出演:ジュリア・ロバーツ、ルーカス・ヘッジズ、コートニー・B・ヴァンス、
   キャスリン・ニュートン、レイチェル・ベイ・ジョーンズ

評価:★★




 同じように薬物依存症の息子とその親の関係を描いた「ビューティフル・ボーイ」(18年)とのいちばんの違いは、物語性が色濃い点だろう。「ビューティフル・ボーイ」が父子関係を定点観測することに専念したのに対し、『ベン・イズ・バック』はリハビリセンターから一時帰宅した息子が原因で起こるトラブルを、時にサスペンスタッチで描き出す。

 特に現状をパズルを解き明かすように説明する前半部が良くできている。息子は妹や母の再婚相手の信頼を完全に失い、もはや煙たがられる存在だ。彼らの冷たい目を承知しながら、母は息子に愛を注ぐ。いや、注ぐことを恐れない。冷静さを失わない正論とそれを全て越えてくる母の愛が衝突する様が生々しい。

 ジュリア・ロバーツ(地味な役作りが意外に悪くない)とルーカス・ヘッジズ(頭の形がよろしく、バズカットが最高に似合っている)は微妙な立場に置かれる母と息子とのハートを掴まえる。ふたりだけなら簡単に完結する関係でも、人はそうするだけでは生きられない。互いへの愛情だけは疑うことなく、しかし過去の出来事が作った見えない壁に対処しながら、他者の冷たい目に配慮しなければならない。その居心地悪さ。

 後半に入ると、母子の距離が徐々に変わり始める。息子は愛ゆえに家族から離れることを選び、母は倫理観を優に超える深い愛で息子を包み込もうとする。どちらが勝つだろうか。答えは言わずもがな。けれど、そこに嘘臭さが見えないのは、額に縦に入る青筋が迫力たっぷりのロバーツと、自分すら信頼できないことに絶望するヘッジズの的確な立ち位置があればこそ。

 ただ、消えたヘッジズをロバーツが探す件は、脚本の練り込み不足が露わになる。母の闇雲な息子の捜索。その努力の報われない流れ。結局担ぎ出される警察。無理解の人々にしか見えない家族や知人。息子が下す決断。…いずれもサスペンスに肉づけするには考察が中途半端だ。

 そうなってしまったのは、作り手がどうやら物語への拘りの糸を緩めてしまったのが原因だ。緩めた分注意が向けられるのは、ドラッグとそれにまつわる世界の恐ろしさへの警鐘だ。「ビューティフル・ボーイ」よりは説教臭さが抑えられているものの、それでも分かり易い闇の構図に物語を落とし込んでしまった感は拭えない。遂に再会を果たす母と息子の姿に、案外思うところが少ないのは誤算ではないか。





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