ドント・ウォーリー

ドント・ウォーリー “Don't Worry, He Won't Get Far on Foot”

監督:ガス・ヴァン・サント

出演:ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、
   ジャック・ブラック、マーク・ウェバー、ウド・キアー、
   キャリー・ブラウンスタイン、ベス・ディットー、キム・ゴードン

評価:★★★




 障害を持つ者を主人公にする場合、作り手の立ち位置は本当に重要だ。やたら近寄り過ぎると人物が感傷的に感じられるし、腫れ物に触るがごとく遠くから見つめるだけでは対象の内部に潜り込むのは不可能だ。ガス・ヴァン・サントはまず、そのことを承知している。

 『ドント・ウォーリー』の主人公ジョン・キャラハンは自身の酩酊状態が原因の交通事故により下半身不随になり車椅子生活を余儀なくされる。ヴァン・サントは別に、だからと言って、キャラハンに過剰に厳しい眼差しを向けようとはしない。物語はキャラハンが絶望の闇の中で光を見出す様を描く、この手の題材と同種のものだ。けれどヴァン・サントは、ゆえにより慎重になる。キャラハンを犠牲者にも愚か者にもしない。

 ただし、大胆さを忘れずに、だ。ヴァン・サントは時制を弄る。いくつかの時点のキャラハンの視点を用意しその言葉を繋げることにより、彼の人物像と物語の全容を組み立てていくのだ。実はこの手法、「誘う女」(95年)でも使われている。あのときは多数の人間の証言を組み立てていたけれど、今回はキャラハンの一人称が守られるのがミソだ。

 徐々に映画の全体像が完成されていくのに従い、キャラハンの人生も見えてくる。事故直後「5ドルあるからビールを買ってきてくれ」とのたまうアルコールにどっぷり浸かった人生を曝け出し、己の無力さを突きつけられ、それに抗いながら認め、抱える怒りの根源を露わにする。そもそも何故彼はアルコールに逃げる道を選んだのか。それを探るからこその、翳りを帯びながらの明るい未来。

 美しくキマるこの演出は、キャラハンそのものが輝いていくというオマケつきだ。辛辣で、無気力で、全てを諦めたかのような男が徐々に変わっていく自分を受け入れる姿が好もしい。キャラハンの人間性に厚みが出てくるのだ。すると周辺人物も単純に彼の人生に関わる人物ではなくなる。ホアキン・フェニックスが珍しや笑みを浮かべ、ジョナ・ヒルが寂し気な瞳を見せ、ルーニー・マーラはいつになく可愛らしい。

 欠点を挙げるとするなら、終幕、キャラハンが彼の人生に関わる人々の元を次々訪れて言葉をかける展開に、説教臭さがあるところか。全てを綺麗にまとめようとして急ぎ過ぎたキライがある。それからキャラハンの風刺漫画家という職業は、もっと不敵に話に取り入れても良かった。漫画の過激さに較べると、キャラハンの人生は十分まだまだお行儀が良い。





ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ