ヘイト・ユー・ギブ

ヘイト・ユー・ギブ “The Hate U Give”

監督:ジョージ・ティルマン・ジュニア

出演:アマンドラ・ステンバーグ、ラッセル・ホーンスビー、
   レジーナ・ホール、アルジー・スミス、コモン、ラマール・ジョンソン、
   TJ・ライト、イッサ・レイ、K・J・アパ、アンソニー・マッキー

評価:★★★★




 主人公、スターという名の少女は9歳のとき、父親から厳しく教えられる。警察に止められたら落ち着くこと。ダッシュボードに手をつくこと。何も武器を持っていないことを分からせること。つまりは警察を刺激しない方法を叩き込まれる。少女の家族は、そう、黒人だ。『ヘイト・ユー・ギブ』には彼らの怒りが充満している。

 アメリカから遠く離れた日本の地にも、定期的にニュースが飛び込んでくる。無抵抗の黒人が白人(刑事)に銃殺されたという類のそれだ。その度に抗議の声が上がり、新たなる暴力が溢れ、ようやく沈静したと思っても、また次の同ケースの事件が発生する。少女は幼馴染の少年が殺される現場に居合わせる。少女の目はそのまま観客の目となり、多様性や平等を謳いながら、過ちを正さない社会を凝視する。

 ジョージ・ティルマン・ジュニアは、それをくっきり見せるため、スターをどう動かせば良いか工夫する。黒人の低所得者の町に父母・兄弟と暮らす彼女はしかし、白人が大半を占める私立校に通うという設定が上手い。家ではギャングやドラッグから逃れられないいかにも黒人な暮らし。けれど学校では言葉遣いも態度も慎ましくなり、ボーイフレンドは白人だ。そのスターが初恋の人の死を目撃し、己のアイデンティティーを見つめ直すことを余儀なくされる。

 「黒人を恐れる者には黒人であることが武器なのだ」。事件の当事者の一人となったスターには、今まで見えていなかったものが見えてくる。ギャングが牛耳る黒人社会の構造。現実に蔓延る偏見や憎悪。一見平等のポーズを取っている者も、どこかに差別意識を具えている。そしてそれは、黒人とて例外ではない。スターのショックがそのまま観客のショックに重なる作法が徹底され、けれどふと我に返ったときの居心地の悪さたるや、あぁ…。

 これはかなりハードな青春ドラマでもある。おそらくそれが生きる術だと本能的に体得したのだろう、スターの家と学校での二重人格的性質を具えた生き方が効いてくる。スターは守られるばかりだったこれまでから、新たなステージへと人生の階段を上がる。そのためにはふたつのアイデンティティーがひとつにならなければならない。そうして彼女は本当の自分になる。スターに扮したアマンドラ・ステンバーグが素晴らしいのは、その変化を生々しく見せるところにある。彼女を囲む家族に扮したラッセル・ホーンスビー、レジーナ・ホール、コモンらも問題の根深さを理解した演技だ。

 別にこれは黒人擁護を第一に掲げた映画ではない。当然白人排除を目指してもいない。クライマックスの暴動には国を分断してしまった今のアメリカの姿がちらつく。それを嘆くだけで終わらない。偏見と憎しみの連鎖を断ち切るにはどうしたら良いか。スターは問題の深いところにまで思いを巡らすキャラクターとして作られている。そこには知性と密着した勇気がある。希望はある、と信じたくなる。





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