魂のゆくえ

魂のゆくえ “First Reformed”

監督:ポール・シュレイダー

出演:イーサン・ホーク、アマンダ・セイフライド、
   セドリック・アントニオ・カイルズ、ヴィクトリア・ヒル、
   フィリップ・エッティンガー、マイケル・ガストン

評価:★★★




 昨今良く見かけるのが信仰(大抵はキリスト教)の大切さ・素晴らしさをスピリチュアルに謳い上げる映画だ。信仰心の薄い者には鼻白むところが多い。『魂のゆくえ』は主人公が牧師で、やはり信仰が大きなテーマだ。もしかすると同じような傾向の作品なのではないかと身構える。何しろ掴みは、牧師と環境活動家の、長々とした噛み合わない対話だ。

 地球の環境破壊を憂うその活動家は、妻が既に妊娠しているというのに、この絶望的な世の中に新しい命を産み落として良いものかと嘆く。牧師は宗教と絡めながら生きる意味を訴える。シンプルな構図だ。けれど、物語はここから予測不能な方向へ捩れていく。

 例えば牧師は、信仰に疑いを抱くことになる。活動家の切々たる訴えに少なからず狼狽えるし、実は息子にイラクに行くことを勧めた後、彼を亡くすという経験から立ち直れていない。妻とは離婚し、最近は体調もよろしくない。さらには教会が環境破壊の一因を作る企業からの献金を受けていることを知る。

 ポール・シュレイダーが狙いを定めるのは、そんな不安定な状況下に置かれた牧師の内に存在する悪魔だ。もちろんこれはホラー映画ではない。悪魔そのものも悪魔祓いも出てこないものの、誰の心にも猜疑心と密着した黒い闇があるもので、シュレイダーはその気配を念入りに炙り出していくのだ。牧師の心の宇宙がじわじわと歪んでいく。

 イーサン・ホークの力量はその過程を見れば一目瞭然だ。善良で真面目であるがゆえに、だからこそ信仰の意味や意義に心悩ます。絶望に直面したときは思いがけない変容を見せ、そしてそれを決して止められない。内面の崩壊が始まったときの、狂おしいまでに制御できない肉体。ホークの佇まいが恐ろしくも哀しい。

 クライマックスの流れは、信仰を軽々しく絶対的なものとして捉える者たちへの挑戦にも見える。牧師の決意がいよいよ禍々しく変態を見せる。シュレイダーがあの「タクシー・ドライバー」(76年)の脚本家であることを考えると、一層に感慨深いものがある。あたかも神の目線であるかような静謐なカメラが掴まえるのは、矛盾に満ちた世界とそこで生きるしかない人間ののた打ち回る姿なのだ。





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