バンブルビー

バンブルビー “Bumblebee”

監督:トラヴィス・ナイト

出演:ヘイリー・スタインフェルド、ジョン・シナ、
   ホルヘ・レンデボルグ・ジュニア、ジョン・オーティス、
   ジェイソン・ドラッカー、パメラ・アドロン、
   スティーヴン・シュナイダー、リカルド・オヨス、グリン・ターマン、
   レン・キャリオー、グレイシー・ドジーニー

声の出演:ディラン・オブライエン、ピーター・カレン、アンジェラ・バセット、
   ジャスティン・セロー、デヴィッド・ソボロフ

評価:★★★




 ロボット型エイリアンにもその内輪揉めにも露ほども興味のない者にとっては、不安でしかないオープニングだ。どこぞやの星で繰り広げられるロボットたちの命を賭けた戦い。続いて地球の地で展開される死闘。「トランスフォーマー」(07年)シリーズと同じことを見せてスピンオフを作る意味があるのだろうか。

 …とあっさり音を上げそうになったところで登場するのが我らがヘイリー・スタインフェルドで、なるほど『バンブルビー』は彼女が顔を見せると同時に青春ドラマの風が吹き始めるのが面白い。スタインフェルドは父親を亡くしてからずっと塞ぎ込んでいる。母親の再婚相手は優しいけれど、簡単に受け入れられない。急にできた弟も同様だ。恋なんて字も分からない。そのスタインフェルドが地球に逃げてきたロボット型エイリアン、バンブルビーと出会うことで変わっていく。

 時代が1987年に設定されているのはもちろん意図的なことだろう。80年代に意識的に量産された「人間と異性物の交流」映画の匂いが強く出ているのだ。あの「E.T.」(82年)こそがこのジャンルの王様で、そちらを意識すると本当に形を変えた「E.T.」に見えなくもない。それを忘れたとしても物語を包み込むのは、視覚効果という武器を手にして浮かれた80年代の軽薄で、でも憎めなくて愛らしいのどかな気配ではないか。ふむ、可笑しい。

 可笑しいと言えば、80年代音楽の使い方が最高。いきなりボン・ジョヴィの「Runaway」が流れ出すあたりでも吹き出すけれど、その後、言語機能を失ったバンブルビーの言葉として何度も何度も流れるのが楽しくて堪らない。たったワンフレーズでも耳に入ってくるだけで妙に懐かしさを誘う80年代の音。これが90年代音楽ではこうは行かない。

 脚本は目新しいところを狙うよりも丁寧さを心掛けたようで、これが功を奏した感。青春の苦しみとして出てくる家族問題、恋愛事情、逃れられない孤独、つきまとう父の死。様々なテーマが過不足なくユーモアと共に描かれる。実は飛び込みの選手だったスタインフェルドが、それを克服するあたりもまずまず機能している。

 けれどこの映画のポイントは結局、スタインフェルドとバンブルビーの見た目の相性の良さに尽きる。典型的な美少女ではないスタインフェルドはしかし、真っ黄色のビートルに化けるバンブルビーと同じ画面に入ると、急激に可愛らしさが増す。バンブルビーと顔を寄せ合う場面など、ちゃんと生き物同士が与え与えられる「情」のようなものがちゃんと感じられる。そう、ここにはハートがある。映画で最も大切な点ではないか。





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