ROMA ローマ

ROMA ローマ “Roma”

監督:アルフォンソ・キュアロン

出演:ヤリーツァ・アパリシオ、マリナ・デ・タヴィラ、
   フェルナンド・グレディアガ、ホルヘ・アントニオ・ゲレーロ、
   マルコ・グラフ、ダニエラ・デメサ、
   カルロス・ペラルタ、 ディエゴ・コルティナ・アウトレイ

評価:★★★★




 何と映画らしい映画なのだろう。アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA ローマ』のことだ。1970年代初頭、メキシコのコロニア・ローマの中流家庭で家政婦として働くクレアの世界に観る者を引きずり込む。キュアロンの幼少時代の出来事がベースだという物語は、クレアの個人史とメキシコの文化や時代の流れが、これ以上ないというくらいに美しい融合を見せる。

 まず目を奪われるのは、何と言ってもキュアロン自身が手掛けているモノクロ撮影だろう。オープニングクレジット、駐車場のタイルを長々と見つめるショットから魔法としか思えない鮮やかさ。別に美しいものを映しているわけではないのに、そのキメ細やかな細胞までが見えてくるような、手に取りたくなるような色合い。光の掴まえ方も印象的で、それはあたかも人の肌に沁み込んでいくのを目撃しているような感覚だ。

 カメラは無闇に動かない。無意味な編集もない。当然静かなる長回しが多くなる。キュアロンはクレオの日常風景をじっくり丁寧に掬い上げ、ありふれた家庭のありふれた時の経過を見守り、彼らが立つ空間の気配を敏感に感じ、そこにある登場人物の心の揺れを見逃さない。クレオは妊娠したことで男に捨てられ、雇い主の妻は夫との関係が上手く行かず、子どもたちはそれを知ってか知らずか無邪気に笑う。心の揺れは痛みを伴い、けれどそれが彼らの血肉となる。

 キュアロンは分かり易い説明を嫌う。当然登場人物それぞれが何を想っているのか、彼なりの答えはあるだろう。ただし、それをセリフで説明したり、安易な心理誘導をすることはない。代わりに余白をたっぷり取る。狙い通りだろう、モノクロの映像が効いてくる。美しく想像をかき立てる二色が詩情をまとい始める。魅力的な画面に親密さを感じていた観る者は、それぞれに答えを出す。

 どの場面も映画的だ。たかがタイルに流れる生活用水が、駐車場に点々と落ちる犬の糞が、レストランや映画館、病院が、新年の祝いが、突然の山火事が、デモ隊と警官隊の衝突が、そこに放り込まれたクレアの目撃者としての目が、いつしか自分の目と重なっていることに気づく。クレアの痛みを感じながら、同時に70年代メキシコの匂いに包まれる。こんな風に体感型の映像というのも珍しいのではないか。最高の追体験だ。

 クレアが経験する出来事、そしてそこから生じる変化が、観客の体験となって浮上する迫力。ある悲劇的な出来事の後、彼女は愛する奉公先の子どもたちをこれまでとは同じようには見られなくなる。それが劇的な変態を遂げるのが海辺で起こるある事故の件だ。クレアから本音が吐き出され、同時に彼女の心が再生し始めるという流れが、どうしようもなく美しい。時代や社会に揉まれながら、しかし人はいつだって逞しく生きていくのだ。





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