グリーンブック

グリーンブック “Green Book”

監督:ピーター・ファレリー

出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ、
   ディミテル・D・マリノフ、マイク・ハットン、イクバル・テバ、
   セバスティアン・マニスカルコ、P・J・バーン、
   トム・ヴァーチュー、ドン・スターク、ランダル・ゴンザレス

評価:★★★




 まあ、快く思わない人がいるのは分からないではない。差別も色々で、あからさまに憎悪を剥き出しにしたそれもあれば、表面上は何でもない風に装いながら心のどこかに闇を抱えたそれもある。『グリーンブック』が扱うのは(この表現は厳密には好もしくないが)ライトな差別だ。そしてそのライトな差別の愚かしさを啓蒙的に説いたところで、あまりに酷い差別の歴史を知る者からすれば、甘ったるいと取られても仕方がない。

 ただ、そこのところばかりに目を留めて、物語のハートに冷たく当たるのも酷く野暮なことではないか。1962年末、クリスマスまでの8週間、南部の街をツアーで回る黒人ピアニストと、差別的な生い立ちと無教養ゆえに時に差別主義が顔を出す白人用心棒が主人公。彼らの心が繋がっていく様には、個と個が向き合うときの、何物にも変え難い何かが詰まっている。

 差別が残る南部の街が、用心棒目線で浮かび上がる。差別を当たり前とするのか、見て見ぬふりをするのか、用心棒の心が知らぬ間に変わっていくのがミソ。説教臭くなってもおかしくないテーマながら、それを上手く回避、良い話風にまとめたのは、この場合最善だったのではないか。差別云々の先にある、個と個の共鳴こそが最大の美点なのだから、大袈裟に騒いでそちらに気を散らせるのは似つかわしくない。

 用心棒役のために思い切りオヤジ体型になったヴィゴ・モーテンセンがやたら可愛くて可笑しい。役柄の差別的な部分はもちろん褒められたものではないけれど、あっけらかんとした立ち居振る舞いと少しずつの心模様の変化が、ガサツを極めた態度(とりわけ食べ方の汚さ)を見事愛らしさに変換する。還暦モーテンセン、まさかキュートになってしまうなんて。

 対照的にマハーシャラ・アリはエレガントの道を突き進む。品位を保つことこそが何よりの勝利と信じる人格者を、持ち前のカリスマ性で魅せる。さらに注目すべきは、この人格者、黒人としては成功者に入る彼が、今の自分のポジションに罪悪感に似たものを抱いていることだ。はぐれ黒人、アイデンティティーに人知れず悩む様が役柄と物語の奥行きを深くする。

 そしてモーテンセンとアリが交わるとき、それは映画の宝石以外の何物でもない。白人と黒人、雇う側と雇われる側、人格者と荒くれ者…個と個がぶつかり互いの中に入り込むことで、様々な対比、区別の境界が消えていくのだ。モーテンセンとアリはその尊さをチャーミングに見せる。ちょっと照れた風なオッサンふたりがますます輝く。





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