ビール・ストリートの恋人たち

ビール・ストリートの恋人たち “If Beale Street Could Talk”

監督:バリー・ジェンキンス

出演:キキ・レイン、ステファン・ジェームズ、レジーナ・キング、
   ブライアン・タイリー・ヘンリー、コールマン・ドミンゴ、テヨナ・パリス、
   マイケル・ビーチ、デイヴ・フランコ、ディエゴ・ルナ、
   ペドロ・パスカル、エド・スクライン

評価:★★




 バリー・ジェンキンスらしく映像美が炸裂する。ニューオーリンズの秋の街をキキ・レインとステファン・ジェームズが並んで歩く冒頭の画からしてうっとり。黄色と青、そして白がそれぞれを引き立て、かつカメラの動きが滑らかで魅了されずにいられない。その他にも真っ赤な傘、クリームの色のコート、肉体が交わるときの薄明かり等、目に焼きつくショットが多々。

 加えて、語りの独特のリズム。スローと言うより、話の関節を外したような語りの速度だ。例えばレインが子どもを宿したことを関係者に伝える、ただそれだけなのにどれだけの時間を使うのか。そのじれったくも感じられるペースが次第に中毒性を帯びる。その一方で、不敵な時制の操作と省略も行われるのだ。

 ジェンキンスは多分、そういうユニークな画と語りの仕上げとしてニコラス・ブリテルによるスコアを大いに意識している。70年代当時を映し出した音色、とりわけストリングスが耳に残る音色が、空間の画竜点睛となる。気怠く、艶っぽく、感傷的で、でも妙に格好良い。

 …と技術的に感心しつつ、ジェンキンスの前作「ムーンライト」(16年)と較べると、詩情は弱めだ。何と言っても、主人公ふたりも周辺人物も喋り過ぎる。特にヒロインはその胸の内を丸裸にする勢いで喋る。愛しい人への熱い想い。現状への狂おしさ。生まれてくる命に対する不安。説明的と言って良いその言葉の数々が、物語の余白・行間を埋めていく。

 すると、皮肉なことに人物が記号化されて見えてくる。差別が色濃い社会。そこで生きていく、愛し合う、その懸命な姿へのエールばかりが前面に出て、彼らが抱える苦しみや哀しみが見え難くなってしまうのだ。レインが前を向く。ジェームズが耐える。周りの人物もそれぞれに奔走する。でもそこに、それ以外の姿が見えてこない。

 別の言い方をするなら、矛盾がない人々の群像だ。黒人が抑圧された生き方を強いられた時代、ここに出てくる者たちは考え方の違いこそあれ、自分というものに何の疑いも抱いていない。それぞれの価値観、善悪の尺度がはっきりしていて、それを揺るがせることがない。一方、他人のそれを気にする素振りも見せない。「ムーンライト」の主人公が己のアイデンティティーにまつわる矛盾にむせ返るほどに苦悩していたのと大変な違いだ。『ビール・ストリートの恋人たち』は美しいメロドラマには違いない。でもそれ以上のものが見つからないのだ。





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