THE GUILTY/ギルティ

THE GUILTY/ギルティ “Den skyldige”

監督:グスタフ・モーラー

出演:ヤコブ・セーダーグレン

声の出演:イェシカ・ディナウエ、ヨハン・オルセン、
   オマール・シャガウィー、 カティンカ・エヴァース=ヤーンセン

評価:★★★★




 少し前にハル・ベリー主演の「ザ・コール 緊急通報指令室」(13年)という映画があった。ロサンゼルス市警の911オペレーターが電話越しに誘拐犯を追跡する。指令室内部の描写が面白い映画だけれど、ただこの映画、後半アイデアが枯渇したのか、結局指令室を飛び出して足を使った捜査に切り替えられた。その点、デンマーク映画『THE GUILTY/ギルティ』は偉い。舞台は同じく緊急通報指令室で、しかも最初から最後までそこから動かない。

 そう、つまりこの映画、画が単調になる危険を多分に秘めているのだ。それにも拘らず、中弛みした画は皆無だ。それは撮影と編集のコンビネーションが優れている証拠に他ならないのだけれど、その際注意すべきは、観客の創造力を信頼する作法に賭けている点だ。電話越しの会話がメインで、当然落とされる情報は限られる。でも、観客はだからこそ想像力で足りない情報を補う。

 とりわけ音に対する観察力が優れている。主人公の警察官は電話から聞こえてくる声に食らいつく。背景から聞こえてくる音が伝える情報を取りこぼしてはならない。どうやら電話の相手は誘拐されたようで、傍らに犯人がいるゆえ、自由には喋ることができない。それならばより一層の技術と知恵が必要になる。観客はそう、警官と一緒に想像力を広げる作業を強いられる。これが緊張感に繋がる。

 ただ、この作品がさらに優れているのは、この想像力に関する考察までなされていることだ。ここで物を言うのは聴覚と視覚で、このふたつを駆使してそれを膨らませていくことになる。クライマックスはこの点を鋭く抉る展開が用意される。人間という生き物がいかに物事を正確に見ていないのかを突きつける。主人公とは別の意味で、観客は闇を感じることだろう。

 そうなのだ。この映画は被害者を助けられるか否かという単純な滑り出しを見せながら、そこに留まることに興味がない。緊迫のやりとり、明らかになる真実が突きつけるのは、社会の病理というやつだ。捜査の過程で唯一その人となりが描かれていく主人公を通して、目には見え難い悪が浮上する。主演のヤコブ・セーダーグレンはその鏡になる。頼もしい強面が効いてくる。

 それにしても効率的な映画だ。無駄になる場面はまるでなく、90分に満たない上映時間をノンストップで突っ走る。終わりが近づくに連れ、物語が全く違う角度から隠れていた表情を見せ始める。善悪が見え辛い今という世の中への警鐘。一流の映画の技が導くそれの迫力に打ちのめされると言っても過言ではない。





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