ゴッズ・オウン・カントリー

ゴッズ・オウン・カントリー “God's Own Country”

監督:フランシス・リー

出演:ジョシュ・オコナー、アレック・セカレアヌ、イアン・ハート、
   ジェマ・ジョーンズ、ハリー・リスター・スミス

評価:★★★★




 物の数分でその世界に引きずり込まれる。『ゴッズ・オウン・カントリー』の舞台は「嵐が丘」でも有名なヨークシャーの山岳地帯、老いた祖母と身体の不自由な父親、そしてその息子ジョニーの営む牧場だ。ジョニーが家畜の牛を世話する様子、一頭の牛を売りに行く様子、父との素っ気ない会話だけで、牧場の現状とそれに苛立ち全てを諦めているジョニーの内面が浮かび上がる。

 ルーマニアからやって来た季節労働者のゲオルゲが加わることで、物語が動き出す。ジョニーとゲオルゲが恋に落ちるのだ。ふたりの間は最初、緊張感しかない。互いにいけ好かなく、けれどいつしか本能的な部分で惹かれていく。言葉の少ないふたりだから、フランシス・リー監督が拘るのは映像になる。男ふたりの心象を言葉以外で描いてみせる。

 とりわけヨークシャーの風景の表情。ゲオルゲは言う。「ここは美しいが、寂しい」と。確かにそうだ。絶景はある。緑は豊かだ。空気は澄んでいる。でも何かが足りない。リーはヨークシャーの景色が変わらないままに変わる様を切り取る。その姿は「母なる大地」という最近あまり聞かれない言葉を思い出させる。ヨークシャーがふたりを厳しくも温かく見守るかのよう。

 ジョニーとゲオルゲの身体にも注意が向けられる。酷く寒い大地の上で、ふたりの肉体が交わることで、画面の熱が上がるのを見逃さない。ジョニーの手が執拗に撮られるのも印象的で、重労働に身を捧げる男の、その長くも武骨な指が、ゲオルゲとの愛により繊細さを獲得していく。

 ジョニー役のジョシュ・オコナーとゲオルゲ役のアレック・セカレアヌは、どちらも所謂美青年ではない。獣の匂いこそないものの紛れもなく男で、「野郎臭」はキツそうだ。おまけに大自然の中で交わるものだから、その身体は泥と草に塗れる。見た目だけでは到底美しいとは言えない。それにも拘らず、見入る。確かに「美」が宿る。彼らの関係に詩情と官能が漂うからだ。

 王道ラヴストーリーの展開を見せながら進む物語(ジョニーがゲオルゲを意識するようになる押し倒しエピソード、怪我舐めエピソードが秀逸)。固唾を呑んで行く末を見つめてしまうのは、ジョニーが心から欲するものに説得力が与えられているため。傷つけてしまったゲオルゲに対してなかなか言葉が出てこない不器用なジョニーが遂に口にするセリフ。「変わろうと努力しているんだ」。これ以上の愛の言葉があるだろうか。そう、ジョニーは変わる。牧場に対する姿勢。父との関係。何より自ら人生に諦めていた態度。愛の力を信じている人たちによる映画だ。





ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ