ナチス第三の男

ナチス第三の男 “HHhH”

監督:セドリック・ヒメネス

出演:ジェイソン・クラーク、ロザムンド・パイク、ジャック・オコンネル、
   ジャック・レイナー、ミア・ワシコウスカ、スティーヴン・グラハム

評価:★★




 序盤のラインハルト・ハイドリヒはモンスターではない。海軍を不名誉除隊となり、物に八つ当たりし、女の前で泣いちゃう男には、まだ人間味が感じられる。そうか、『ナチス第三の男』はハイドリヒがハイドリヒになっていく過程を描く映画なのかもしれない。

 …という予感はあっさり打ち砕かれる。ハイドリヒ、諜報活動で一度頭角を現してからは実にとんとん拍子の出世ぶりで、電光石火で党幹部へ。モンスターになるまで早いこと早いこと。「浄化」を嬉々としてやってのける様は狂っていて、でも、うん、演じるジェイソン・クラークの金髪姿も含め、イメージ通りのハイドリヒではないか。

 やはりここはハイドリヒの人間性が怪物的なものへと変貌を遂げていく様子をじっくり追うべきではなかったか。マクベス夫人のごとき妻(ロザムンド・パイクがさすがの迫力)に操られ、でも瞬く間に彼女の手に負えなくなるハイドリヒ。その細胞変化こそが見たい。彼には常人とは違う何かがあったはずなのだ。だからこそ第三の男に上り詰めたはずなのだ。

 …と嘆きかけたところで映画は思い切った転調を見せる。前半主役だったハイドリヒは脇に追いやられ、彼の暗殺計画を実行するチェコのレジスタンス、中でも青年兵士ふたりの青春ドラマの様相を呈してくるではないか。もちろん意図通りの転調であり、でも、その効果は良く分からない。暗殺を色々な視点から観察したいということ?でも、そうしたからといって計画に奥行きが出るわけでもハイドリヒの新しい表情が垣間見えるわけでもない。

 ただし、思いがけないこの青春要素が、この際悪くない。ジャック・オコンネルとジャック・レイナーがパラシュートでチェコに降り立ち、ナチスの目から逃れながら活動に身を投じていく様。大義への献身と同志ゆえの繋がりに、若く未熟ゆえ、だからこその輝きがあり胸が熱くなる。ここでは恋愛要素も意外や邪魔にならない。輝きの刹那性を高める効果がある。オコンネルとレイナーもオッサンになる手前の最後の若いきらめきがある。

 そして重要なのは、「ハイドリヒ暗殺後」だ。計画成功を喜んで終わり、ではない。代償と言っては気の毒だけれど、ハイドリヒを消したことで始まるナチスの更なる蛮行が、プラハの街をやりきれない闇で包んでいく。レジスタンスの成し遂げたことは何だったのか。そこに何を感じ入るべきなのか。もし計画が実行されていなかったらどうだったのか。ナチスの闇の悍ましさをまざまざと見せつけられる結末。物語の転調は不可解でも、その余韻は後を引くそれだ。





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