天才作家の妻 40年目の真実

天才作家の妻 40年目の真実 “The Wife”

監督:ビョルン・ルンゲ

出演:グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーター、
   マックス・アイアンズ、ハリー・ロイド、アニー・スターク、
   エリザベス・マクガヴァン、ユーハン・ヴィーデルベリ

評価:★★★




 まあ、はっきり言ってしまうと、そんなに好感度の高い顔ではない。グレン・クローズのことだ。顔の中央に寄った小さいふたつの目が原因だろうか。ちょっと睨んだだけで画面が凍りつく。おまけに「危険な情事」(87年)「危険な関係」(88年)が代表作なものだから、怖い女のイメージもつきまとう。けれどクローズ、そんなこと全然気にしていないのがサイコー。

 『天才作家の妻 40年目の真実』は邦題そのままの話だ。作家の夫がノーベル賞を受賞、彼と一緒に授賞式に向かった妻クローズの心境の変化を追う。妻が長年胸の内に抱え込んでいる秘密が話を牽引するわけだけれど、大抵の観客は秘密の正体をあっさり察することだろう。ミステリーとしてはさほど練られた脚本ではない。

 ただ、ビョルン・ルンゲが偉かったのは、それを表現するために、クローズの表情を捉え続けることにとことん拘ったことだ。作中、幾度もクローズの顔をアップで捉えたショットがあり、その度にクローズが穏やかに見えた妻の心象を、痛みと哀しみを養分にした真実味たっぷりに、生々しく描き出していくのだ。受賞の知らせを受けてベッドで無邪気に飛び上がって喜んでいた夫婦の真実。サスペンスがせり上がる。

 とりわけ妻が受賞スピーチを聞き、その後ホテルに帰って夫に想いをぶちまける流れが圧巻のグレン・クローズ ショー。創作とは何か。男と女のあるべき関係とは何か。夫婦である意義はどこにあるのか。積年の恨みが向かう先。女の社会的地位の問題。生きるとは、死ぬとはどういうことか。クローズの表情の隅々に浮かぶ様々な感情が、どんなセリフよりも雄弁にその複雑さを差し出す。

 加えてここには、果たして妻は夫を本当に愛していたのだろうか。…という謎も立ち上がる。夫に対する怒りに似た感情を抱えていたことは間違いない。それに気づかないふりをしていたことも事実だ。けれど、そこにそれでも愛は存在していたのか。夫の迎える運命はイージーでも、クローズが見せる本音がブレを見せることはない。

 終始充実のクローズ ショーである一方、ずっと気になってしまうのは、これが映画よりも舞台向きの題材だということだ。場面毎に場所は移動する。カメラもそれに食らいつく。けれど実のところ、大半が会話劇だけで成立する。言い換えるなら、映画的興奮と抑揚に乏しい。肉体の動きに制限がかかる。映画的なクローズの表情だけではさすがにカヴァーできない。





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