ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー “Rebel in the Rye”

監督:ダニー・ストロング

出演:ニコラス・ホルト、ケヴィン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、
   ルーシー・ボイントン、ヴィクター・ガーバー、ホープ・デイヴィス、
   ブライアン・ダーシー・ジェームズ、ジェームズ・アーバニアク、
   アダム・ブッシュ、ジェファーソン・メイズ、サラ・ポールソン

評価:★★




 『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』はタイトル通り、J・D・サリンジャーを主人公に置いた映画だ。大雑把に分けて三部構成になる。作家になりたい野心溢れる駆け出し時代。戦争によるPTSDに苦しみながら代表作「ライ麦畑でつかまえて」を生み出す、苦難と栄光の時代。名声とうまく付き合えず苦悩する「ライ麦畑」後時代。つまりこの映画、伝記としてサリンジャーを掴まえようと試みる。

 多分、それが間違いだったのだ。サリンジャーの半生を駆け足で描き出すのは良いけれど、見事作家の伝記物にありがちなエピソードの羅列に終わり、せっかく見る側が主人公の内面に何かを見つけかけると、既に話は次の薄いエピソードに移っている。最も面白くなる可能性を秘めた時代に絞って語るべきだったのではないか。

 面白くなる可能性を秘めた時代とは、もちろん「ライ麦畑」を生み出す絶頂期前後だ。実際「ライ麦畑」の主人公ホールデン・コールフィールドとサリンジャーの人生が重なって見えてくる「第二部」には身を乗り出す部分が少なくない。戦争での過酷体験。生活の中に紛れ込むPTSD。恩師との確執。瞑想が導く平穏。出版社との攻防。「ライ麦畑」の文章がそのままサリンジャーの生き方に重なりながら作品が生まれていく過程は、信者には堪らないものがあると察する。ここを深く考察するのだ。

 中でも恩師との関係性を面白く観る。サリンジャーの才能を見抜き、物語を語ることを教え、処女作の出版に手を貸し、けれどあることが原因で疎遠になっていく恩師は、間違いなく彼なくして作家サリンジャーの誕生は、大ベストセラーの誕生はなかっただろう重要人物。恩師を演じるケヴィン・スペイシーは出過ぎず霞まずの絶妙なポジションをキープする。サリンジャーの恩師に対する歪んだ思いをもっと知りたい。

 もうひとつ、温い中でも興味を惹かれたのは時代描写だ。とりわけ美術と衣装が美しい。煙草の煙。上品なドレス。匂い立つアルコール。ホーンの響き。繊細な食器。温か味のある内装。機能性の中に美を覗かせる雑貨。女たちに較べて味気なく映りがちな男どもの衣装も、モダンでスタイリッシュな魅力が溢れる。

 しかも、それをまとう中心人物がニコラス・ホルトなのだ。いやー、ホルト、本当に上手く成長している。細過ぎず太過ぎずの肉体バランスもさることながら、顔立ちが素晴らしく清々しい。目の下に影ができる彫りの深さ。可愛らしい額。小さめの口の下で主張する力強い骨格の顎。当時のコスチュームを何の嫌味もなく着こなすあたり、ホルトが美の絶頂期にいる揺るぎない証。話が弛んでも、ホルトを眺めるだけで満足してしまうのだ。





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