喜望峰の風に乗せて

喜望峰の風に乗せて “The Mercy”

監督:ジェームズ・マーシュ

出演:コリン・ファース、レイチェル・ワイズ、デヴィッド・シューリス、
   ケン・ストット、アンドリュー・バカン

評価:★★




 それのレースは「ゴールデン・グローブ」と呼ばれる。単独無寄港世界一周ヨットレースのことだ。『喜望峰の風に乗せて』の主人公ドナルド・クローハーストは船舶機器の開発を生業としているビジネスマンで、けれどヨットの経験はないに等しい。それなのにこのレースに挑戦するというのだ。無謀としか言いようがない。この映画で最も大切なことは、無謀以外の「何か」を浮上させるところにあるとして良いだろう。

 それに同意するかのように、序盤はクローハーストの浅はかさを補強するエピソードが並ぶ。愚かさの種を入念に蒔き、やがてそれが芽を出し花を咲かせたとき、物語や人物に新たな表情が見えれば良い。映画は動くものを愛する。ここではクローハーストの挑戦から浮かび上がる、変化だ。

 ところが、いつまで経ってもクローハーストは無謀なだけなのだ。経験もなければ技術もない男が夢を見続け、でもそこにずっと立ち止まったまま。無謀はバカに通じる。「夢見るオッサン」なイメージが全く動かない苦痛が話を支配する。

 決定的におかしいのは、クローハーストが自然の猛威に立ち向かったり打ちのめされたりする場面がほとんどない点だ。船酔いはするし、負傷も多い。けれど、海という名の大自然の前に、心身共にひれ伏すしかない、どうにもならない絶望を示す画もエピソードも出てこない。映し出されるのは、どうしてもスピードが出ず、人々の期待に応えられない焦り。それを禅問答のように己に酔いながら語る。プライドの問題に見えてくる。

 そうしてクローハーストは「罪」を犯す。彼の帰りを待ちわびる家族やマスコミとの対比を通じて描かれるのは、「人間の弱さ」というやつで、でもこれは通常、強い人間が見せるから「映える」のであって、無謀な人間として出てくるクローハーストがそれを強調しても、それみたことか、で終わってしまうではないか。

 こう言っては何だけれど、クローハーストを演じるコリン・ファースはもっと肉体的にボロボロになってくれないと…。ファースは別に綺麗に撮られたいなんて思っていないだろうに、いつまで経っても「漂流七日目」程度にしか汚れない。同情する気も失せるというものだ。実話ベースの話とのことだけれど、こんな描かれ方で、遺族がどう感じるのか心配になる。





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