ヒア アフター

ヒア アフター “Hereafter”

監督:クリント・イーストウッド

出演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、フランキー・マクラレン、
   ジョージ・マクラレン、ブライス・ダラス・ハワード、ジェイ・モア、
   マルト・ケラー、ティエリー・ヌーヴィック、デレク・ジャコビ

評価:★★★




 老いてますます精力的なクリント・イーストウッド監督がさらに素晴らしいのは、どんな題材でも趣味良くまとめ上げてしまうところにある。戦争映画を撮ったかと思えば、20年代を舞台にした誘拐スリラーを手掛け、ネルソン・マンデラを取り上げたと思ったら、死後の世界に接近する。その振り幅の広さ以上に、いずれも重心の低い、骨格のしっかりしたドラマになっているところに唸る。

 『ヒア アフター』の冒頭、イーストウッドらしからぬスペクタル場面が登場する。東南アジアの海辺の町が大津波に襲われる件だ。一見ハリウッド大作のような、視覚効果をふんだんに用いた派手な画面作り。しかし、実のところイーストウッドの視線が個人の視線から決して動くことがない。最初こそ大波が町を呑み込んでいくショットを入れるものの、それ以後はずっと、津波に巻き込まれたセシル・ドゥ・フランスの目を通じてそれを描き出していく。個人を優先した最小限の切り取り方。そしてこの撮影論は映画を象徴してもいるだろう。

 パニック映画を思わせる場面があっても、個人の視線を失わない。ホラー要素があっても、おどろおどろしい音楽は流れない。霊の世界が語られても、そこに踏み込むことは遠慮する。ドラマティックな葛藤が浮かび上がっても、登場人物が声を荒げることはない。画面の色合いも大変落ち着いたもので、静かな語り口、そしてスピリチュアルな物語と美しく調和している。万事が気品を失うことなくまとめ上げられている。

 ただ、若干の忍耐力は必要かもしれない。いつも同様イーストウッドは語ることを急がない。サンフランシスコ、パリ、ロンドンという三都市に住む3人を主人公に置き、彼らがいかにして死と接触しているか、死と向き合っているか、死を咀嚼しているかをじっくり交互に浮かび上がらせる。スロウなペース配分は彼らの孤独や淋しい気持ちを多分に引き出してはいるものの、分かりやすいうねりには乏しいため、じれったく感じられるときがある。ただし、最後の30分、遂にロンドンで彼らの人生が交錯し始めるときに気づく。それまでに蒔かれていた種の存在を。そしてそれが鮮やかな花を咲かせていく。

 イーストウッドが語りかけるメッセージは酷くシンプルだ。絶望や不安、やり切れない思いを抱いて人は生きている。命があっけなく終わりを告げることもある。でもそれが人生であり、その中にも確かに生きる意味がある。隣り合わせの生と死が、押し付けがましくない物腰に見えてくる。やっぱりこれはイーストウッド映画だ。





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