奇人たちの晩餐会 USA

奇人たちの晩餐会 USA “Dinner for Schmucks”

監督:ジェイ・ローチ

出演:スティーヴ・カレル、ポール・ラッド、ザック・ガリフィアナキス、
   ジェマイン・クレメント、ジェフ・ダナム、ブルース・グリーンウッド、
   ロン・リヴィングストン、ステファニー・ショスタク、ルーシー・パンチ

評価:★★




 スティーヴ・カレルがいつもと感じが違う。…と思ったら髪の毛の色がこれまでより明るい。黒髪に慣れているせいか、どうも落ち着かない。メガネをかけているのも、しっくり来ない。同タイトルのフランス映画(98年)を基にしているのでヨーロッパの香りを狙った…わけではないよなー。

 オリジナルは未見のため比較はできないのだけど、おそらく「バカを招待して彼らを笑いものにしよう」という趣旨の晩餐会が軸になっているところは同じなのだろう。全くもって底意地が悪いディナーパーティで、そこにおフランスならではの人間観察や社会風刺が塗されていることが想像できる。無意識に逆スノッブ的な物語。これがハリウッドでリメイクされるとなると、そういう小難しい匂いは雲散霧消する。「バカを笑うのは愚かしいことだ。そういう卑しい行為に走る者こそバカなのだ」という退屈な変換がなされる。でもこれがアメリカ人の良いところ、憎めないところでもあるとも思う。

 そうして選ばれたバカ、或いは奇人に位置するのがカレルだ。『奇人たちの晩餐会 USA』で最も問題なのは、このカレルの描き方。つまり物語の吸引力となるべき主人公の造形に欠陥が見られる。良かれと思った行為が全てに裏目に出てしまい、周囲の人間を困惑の渦に巻き込んでいく男。これに相応しい言葉はバカでもないし奇人でもない。ただ迷惑なだけなのだ。彼が歩けば事件が起こる。悪気はないのに状況を次々悪化させていく、いかにも映画らしいキャラクター。大変動かしやすい人物であり、安易な人物設計とも言える。迷惑なだけではない、何か引き寄せられるものを持っているところを手際良く見せることをしなければ、観ている方はフラストレーションを溜めていくだけで終わる。

 つい思い出すのは英国が生み出した「ビーン」(97年)だ。こちらは丸っきり漫画になっていたけれど、実は全く同じパターン。最近のアメリカ映画「デュー・デート 出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断」(10年)も同じ流れに入るだろう。迷惑行為から笑いを生み出すには、キャラクターに負けないプラスアルファが必要だとつくづく思う。

 カレルの目がこんなにも怖かったのは初めてかもしれない。笑いを意識した場面でもメガネの奥の目が全然笑っていないのだ。今回カレルは、外見を変えていることからも分かるように、かなり作り込んだ役作りをしているのだけど、その頑張りが透けて見えるのが辛い。笑顔を振り撒いても、作られたそれであることが見えるので、居心地の悪さに繋がってしまう。普段のすっとぼけた可笑しさがここには見られない。脇を固めるザック・ガリフィアナキス(偶然にも「デュー・デート」にも出演)の方が伸び伸びと大らかな存在感だ。

 ハリウッドリメイクとは言え、終幕が男の友情物語になったり夢の大切さを説く話になったりするのには閉口する。意地の悪い設定を忘れさせてしまうようなフィールグッドムービーの方向に持っていくのは、さすがに生温い。バカたちが、奇人たちが想像を超える行為に走り、笑っていられなくなるブラックなところまで突っ走ることはできなかったのか。

 見ものはディテールにある。カレルが作る、ネズミの剥製を使った名画のパロディはイチイチ可愛い。ネズミに着せる服も細かな美術も大いに見応えがある。シルバニアファミリーもビックリだ。ジェマイン・クレメントが演じるアーティストの暴走もなかなか嬉しいバカバカしさだ。このあたりをもっと膨らませられたら、額面通りの笑いから一歩抜け出せたかもしれない。





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