ヘレディタリー 継承

ヘレディタリー 継承 “Hereditary”

監督:アリ・アスター

出演:トニ・コレット、アレックス・ウォルフ、ミリー・シャピロ、
   アン・ダウド、ガブリエル・バーン

評価:★★★★




 昨今我が国では、白目をむいたり鼻の穴をおっ広げたり下顎を激しく突き出したり、とにかく(大抵美男美女が)コント風に顔を崩すのを思い切った変顔、或いは優れた顔芸などと言って讃える傾向にあるようだけれど、ちょこざいな、全く持ってバカバカしい。トニ・コレットを見よ。ここまでやって初めて「芸」と言えるのだ。人の心を震わせるのだ。観る者を硬直させるのだ。

 『ヘレディタリー 継承』のコレットは別に、「怪異」の役どころではない。ある忌まわしき運命に翻弄される家族の母親役で、一家を襲う悲劇を体感する側だ。それにも拘らず、コレットが怖い。それは顔の捩れ方が尋常でないことからも来ている。ただ、それ以上に彼女が受ける衝撃が、そのまま恐怖として顔に貼りつくからこそ怖いのだ。しかもコレットの表情は、決して物語の流れを止めることがない。むしろ加速させる。食卓場面でのコレットの狂気には完璧にやられる。

 コレットが映し出す恐怖は、実のところ、ホラー映画としては極めてオーソドックスな部類に入るだろう。「ローズマリーの赤ちゃん」(68年)「エクソシスト」(73年)「オーメン」(76年)といったタイトルを出すと分かり易い。悪魔物だ。ただ、途中までそれに気づかない。画面に嫌な気配が充満していくのは明らかなのに、その正体がはっきりしない。結果、得体の知れない不安感と緊張感に常につきまとわれる。

 これを単純に「呪い」と指すことは可能だろうか。別にそうなってしかるべき罪を犯したわけではない。しかし、生まれたときからそうなる定めを背負っていたという不条理さ。それを「家族」に絡めるのがミソだ。本来窮地で心強い味方になるはずの形態がしかし、ここでは決して逃れられない、離れられない、手を放すことのできない鎖となって執拗に絡みつく。

 映画は、気がつけばこの呪いに雁字搦めになっている家族に、哀しみを伴う現実感をもたらすことに全てを捧げる。良く目を凝らすと、そこかしこに見える「アレ」。母が狂ったように作り続けるドールハウス。意識なく彷徨う夢遊病。静かな遺族の会。家のみならず田舎町の至るところに見える紋章。…全てが狂乱のクライマックスに向けての大切な下地になる。

 意思的なカメラワークが恐怖を増幅させることに大いに貢献する。決して高速では動かない。じわりねっとり対象を映し出し、その周辺の奇怪な空気を静かにそっと捕らえてみせる。だから、カメラが動いたときは気をつけた方が良い。何かが動く合図でもある。悪魔のもうひとつの目として見ることも十分可能だろう。





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