A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー

A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー “A Ghost Story”

監督:デヴィッド・ローリー

出演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ

評価:★★★




 男が死に、遺された女の傍らに立ち続ける。…なんて書くと、「ゴースト ニューヨークの幻」(90年)を連想するものの、これは『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』のプロットとして、より適切だ。ここには女のピンチを知らせなくてはと焦る派手な画面も、永遠の愛を語り掛ける甘い場面も、一切見当たらない。そもそもゴースト(本当は「幽霊」と言った方がぴったり来る)が、シーツを頭から被り、目の部分に穴を開けただけなのだから。

 このゴーストのスタイルにシュールという言葉を使うのは正しくない。この映画のいちばん面白く興味深いところは、徹底してゴーストの視点で話が展開するところで、この世に囚われた者の哀れややるせなさ、そして可笑しみこそが急所になる。マヌケな姿には違いなくても、白いシーツには思いがけず情感が宿る。

 作り手はゴーストに対してルールを作らない。いや、何もできず佇むだけなので、ルールを作る必要がなかったのかもしれない。感情が高ぶると時折、所謂「心霊現象」を起こすものの、大抵は自分がいないところで過ぎていくこの世の時間の傍観者であり続ける。ただ、ゴーストは意外にも愛しい人には憑かない。ゴーストがこだわり続けるのは、家そのものという解釈で、これが物語に新しい視線を送り込む。

 女が引っ越してもゴーストが一緒に行かないのが意表を突く。そんなにもこの家に思い入れがあったのか。いや、違うだろう。ゴーストというのはそういうものなのだ。隣の家に棲むゴーストは言う。誰かを待っている。でも誰を待っているのかを忘れてしまった、と。ゴーストの心情に寄り添うことが守られる。

 尤も、こうしたゴーストの佇む画だけではさすがに退屈を招くかもしれない。…と危惧したところで繰り出される更なる技が、ゴーストが家に拘り続けた挙句、時空を超えてしまう展開で、見ようによっては豪快な捻り技だろうか、それとも無理ある飛躍になるだろうか。判断は分かれるだろうけれど、個人的にはゴーストが「納得」を手にするには必要な旅だったと受け入れたい。

 ケイシー・アフレックを起用しながらずっとシーツ姿で通させる。何とも贅沢と言うか、無駄遣いと言うか。けれど作り手はそれを守ることで、物語に詩情を取り入れることに成功する。観る者の心を満たしていく不思議な安らぎは、多くの人が経験したことのない類のそれではないか。それもそのはず。ゴーストが獲得したそれを疑似体験するわけだから。アイデアに溺れない腰の強さがある。





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