嘘はフィクサーのはじまり

嘘はフィクサーのはじまり “Norman: The Moderate Rise and Tragic Fall of a New York Fixer”

監督:ヨセフ・シダー

出演:リチャード・ギア、リオル・アシュケナージ、ハンク・アザリア、
   スティーヴ・ブシェーミ、シャルロット・ゲンズブール、
   マイケル・シーン、ダン・スティーヴンス、ジョシュ・チャールズ、
   ハリス・ユーリン、イェフダ・アルマゴール、
   ネタ・リスキン、タリ・シャロン、アン・ダウド

評価:★★★




 そもそもフィクサーという職業からして胡散臭い。…なんて書くと、本当に生業としている方に失礼だろうか。フィクサーには物事を裏で操り、思い通りに進める仲介人、或いは揉み消し屋のようなイメージがある。それをリチャード・ギアが演じる。さぞかし小狡く、気取った、いけ好かない奴だろうと想像する。

 ところが、『嘘はフィクサーのはじまり』でギア扮するノーマン・オッペンハイマーなる人物は、確かに小狡いところは多々あるものの、むしろ憎めない何かを感じさせる男だ。いつも笑みを絶やさず、口から出まかせが次々飛び出し、けれどそういう風にしか生きられない中に、抗い難いチャームを忍ばせる。当然そこには可笑しみと同時に、生きる哀しみが滲む。

 競馬好きのおっちゃん風ハンチング帽、頑なに首を守るマフラー、らくだ色のコート、そしてたっぷり傷ついていそうなメガネ。これはノーマンが見せる唯一のスタイルで、時間が流れても決して変わらないその風貌が、常に誰かと関わろうと必死な空気を醸し出す。大物を演じながら、それでも彼は心のどこかで気づいているだろう。自分は器の小さな人間だと。他人に擦り寄って生きる男の本質を捉えたギアに見入る。

 ユダヤ人社会に何とか食い込み、イスラエル首相との繋がりを懸命に守るノーマンの綱渡り人生を通して浮かび上がるのは、名声や金と密着した欲望の怪物性だ。これが誰もが知る大物のそれであればあっさり腑に落ちる。しかし、風に吹かれて今にも飛んで消えてしまいそうなノーマンのような者でも、同じようにそれを生きる燃料にしているという事実は、案外鋭い。誰かに認められた自分であること。その意味や意義についての考察でもあるのだ。

 ノーマンの滑稽な立ち居振る舞いを笑っていたのが、次第に哀しい感情が沸き上がってくるのは、そのせいだ。「彼はいちばんの友達だ」「妻が仲良くしているんだ」。人脈というものがいかに力を持ち、しかし軽薄なそれでもあるのか。ノーマンの中に自分を見つける人は多いだろう。フィクサー云々を超えた「人生の危ういバランス」に思いがけない現実感が宿る。

 クライマックスの流れは胸が痛む。イスラエル首相に友人扱いされ、一時は栄光を極めたノーマンが全てを悟り、万事休す、下す決断。作り手がその皮肉な結末を選んだ理由は分かるものの、ここは一発逆転、もうひとつ大きなはったりを打ち上げて欲しかった。その方が常に崖っぷちを生きるノーマンのしぶとさが映えたのではないか。





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