アンセイン 狂気の真実

アンセイン 狂気の真実 “Unsane”

監督:スティーヴン・ソダーバーグ

出演:クレア・フォイ、ジョシュア・レナード、サラ・スタイルズ、
   マーク・クディッシュ、エイミー・アーヴィング

評価:★★




 君には青が似合う。…なんて甘い言葉から始まると言っても、ロマンティック・コメディではない。これはストーカーがターゲットに向けて語り掛けるそれなのだ。ヒロインは男から逃げる。心が不安定になる。これだけでも気の毒なのに、飛び込んだ先の精神科病院で強制的に入院させられる。踏んだり蹴ったり。『アンセイン 狂気の真実』は精神病院スリラーとストーカースリラーをミックス、ホラーとして仕立て上げる。

 スティーヴン・ソダーバーグが監督ゆえ、どこかで見たような画は出てこない。精神病院を舞台にした既存映画を思わせる要素をちらつかせる余裕を見せながら、安いホラーには興味はないとばかりに、突然の巨大音やショッキングな映像で恐怖を煽る愚は犯さない。ソダーバーグは映像の熱を操ることでヒロインを追い詰めていく。

 ただ今回のソダーバーグは、驚くほどにストーリーそのものに興味を示さない。ストーカーが職員として病院に入り込んでくる件はお粗末が過ぎるし、やる気がないとは言えスタッフの動かし方は不快感に直結するものばかり。病院が保険会社と組んでまともな人間を入院させるという手口も雑と言われても仕方ない。ゆえに、病院内をストーカーが自由に動き回り、ヒロインに接近する様、ここに全くの説得力がない。

 実は最初、ヒロインを演じるクレア・フォイの好パフォーマンスも手伝って、ストーカー云々は全てヒロインの妄想なのではないかという疑念が過るのだけれど、直球に徹した、捻りや裏表のないなおざりの語りにより、その可能性は早々と打ち消される。結果、映像主義ではあっても、印象としては案外フツーのストーカー映画なのだ。

 ソダーバーグが遊ぶのはやっぱり画の方で、実はこの映画、全編iPhoneによって撮影されたのだという。iPhone映像とは分からないものの、それでも画に独特の温度がある。無駄な動きはますます排除される。どこか監視カメラ映像、盗撮映像的気配を湛える。人間の顔がアップになれば、シワやシミ、毛穴がくっきり捉えられ、その肌の質がありありと分かる。ドキュメンタリー的撮り方ではないのに、その匂いが立ち込める。

 なるほど一般庶民の身近な恐怖を浮かび上がらせるという意味で、iPhoneの選択は間違いではないのだろう。ただ、絶対にそうでなければならなかったようには見えないのが苦しいところで、ソダーバーグならばいつものカメラ術でもっと凝った映像が作れるのではないかと思ってしまう。話がやけにそのまんまなのもiPhone撮影の影響ではないか。おそらくソダーバーグ自身は最高の玩具を手にして楽しく撮影したのだろうけれど…。





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