ダーク・クライム

ダーク・クライム “True Crimes”

監督:アレクサンドロス・アヴラナス

出演:ジム・キャリー、マートン・ソーカス、シャルロット・ゲンズブール、
   アガタ・クレシャ、 ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ、
   カティ・オウティネン、ヴラド・イヴァノフ、ピョートル・グロヴァツキ

評価:★




 いきなり妖しく淫らな画から始まる。女が天井から吊るされ、目隠しされた女が椅子に縛られ、女たちが裸で交わる。それをスーツを着た男たちが間近で眺める。どうやらセックスクラブの映像のようで、ここで殺人事件が起こったらしい。ちらつく言葉は「野蛮」「堕落」「欲望」…。『ダーク・クライム』はサイコスリラーで、これをジム・キャリー主演で描くのが間違いの元。

 いや、気持ちは分かるのだ。近年のキャリーはその目が病んでいる(ように見える)。感情がどこにあるのか読めず、いつも冷静の糸が切れてしまいそうな危うさを湛えている。この暗く暴力的なスリラーの世界観に放り込んでも違和感はない。おそらく作り手はそう考えたのだ。

 だが、その読みは甘かった。キャリーの醸し出す危険な匂い(狂気と言い換えても良い)はいよいよ、他人がコントロールできるレヴェルにはない。いや、当人のキャリーですら、どこに向かうのか分かっていないかもしれない。無造作に生やした白い髭。進行中のM字を隠さない丸刈り。そして何を見ているのか分からない危険な目。シリアスに向かえば向かうほど、キャリーの躁鬱病的な気配が濃厚になって、映画どころじゃなくなる哀しさよ。

 例えば容疑者役のマートン・ソーカスと並べてみると良く分かる。ソーカスは明らかに悪人顔だけれど、それは演技者が作った悪人顔だと頭のどこかで無意識に理解できる。ところがキャリーのシリアス顔は、それが事件捜査にのめり込む刑事の顔だと説明されても、それよりも先にキャリーの精神状態を心配せずにはいられなくなるのだ。終いにはソーカスとキャリー、どちらが容疑者か、混乱を誘う。刑事のキャリーこそが犯人ではないか。もしかしたら二重人格なのではないか。捜査の振りをして証拠を揉み消しているのではないか。

 キャリーの恐ろしさがいよいよ極まるのは、甚振られキャラクターがいよいよ板についてきたシャルロット・ゲンズブールとのセックス場面だ。SM風味のセックスが捉えるのは、キャリーの顔のアップ。この際、キャリーがゲンズブールを殴ったりあんあん喘ぐのもギョッとするけれど、額に浮かぶ汗が妙に生々しいのが、輪をかけて衝撃的。キャリー、いやホント、大丈夫かね。

 キャリーの現状分析みたいな感想しか出てこないのは、事件とその真相自体に吸引力がないせいもある。ソーカスの書いた小説と同じ殺し方云々という件は、「氷の微笑」(92年)の例を挙げるまでもなく、三文小説でよくある設定。現場検証、嘘発見器、不法侵入による証拠集め、警察内部腐敗等、捜査過程に出てくるエピソードは平凡そのもの。真相に至っては見たままの味気なさではないか。最後のオチもバカバカしくて…。キャリーは結局コメディが良い。それが結論の映画だ。





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