アンダー・ザ・シルバーレイク

アンダー・ザ・シルバーレイク “Under the Silver Lake”

監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル

出演:アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオ、トファー・グレイス、
   ゾーシャ・マメット、キャリー・ヘルナンデス、パトリック・フィスクラー、
   グレース・ヴァン・パタン、ジミ・シンプソン

評価:★★★★




 誰でも夢を見る。意識することなく夢を見る。ただ、それが爽快感に満ちているとは限らない。いや、むしろ悪夢の方が多いのではないか。そして、夢を見るのは人間だけとは限らないだろう。例えば、街も夢を見ることが、悪夢にうなされることがあるのではないか。『アンダー・ザ・シルバーレイク』はそう、ロサンゼルスの悪夢を描き出す。

 …と言っても、街が蜃気楼のように見る夢を、簡単に映像にできるわけがはない。デヴィッド・ロバート・ミッチェルはいかにして、LAの夢を近くに手繰り寄せるか、悪夢を燻り出すか、それに心を砕く。その過程をストーリーとして綴るのだ。この際重要なのは、何を用いることで、夢に立体性を持たせるかということで、ミッチェルが見つける材料は、ポップカルチャーということになる。

 夢を追いかける魂がありとあらゆる場所から集まる街。ここには映画や音楽はもちろん、聞いたことがないようなカルチャーまでが集まり、カオスの都を創り上げている。それは、大量に生み出されては消費され、を繰り返す。人の心や記憶に残るのは、その中のごく一部でしかない。ミッチェルはそこに意味を見出す。きっときっと生きる暗号が隠されているに違いないと…。

 そうしてミッチェルが創り上げる王国の、何とも奇怪な外観よ。いきなり「犬殺しに注意せよ(BEWARE OF THE DOG KILLER)」の文字から始まり、空からリスが落ちてきて、映画プロデューサーは失踪。熟れた女が乳を晒し、若い女は犬と戯れる。フクロウ女も闊歩する。いちいち画が目に焼きつくのは音楽やカメラワークの凝りようだけじゃなく、色彩感覚の絶妙にレトロな気配が大きい。いかにもLAらしい鮮やかさを湛えながら同時に、その息遣いが聞こえてきそうな親密さがある。

 当然ストーリーを追いかけるのは賢明ではない。ブロンド美女の失踪というミステリーが用意され、アンドリュー・ガーフィールド演じる素人探偵はLAの街をひょこひょこ駆けまわるものの、結局のところ、映画の核心らしきものは何気ない会話にひょいと顔を出す。人生から脱落したみたいだ。あるべき人生の失敗版を生きているみたいだ。そしてそう、悪夢の後に残るのは、確かにこの感触なのだ。

 ミッチェルが好むイメージがいちいち生々しいのは「イット・フォローズ」(14年)のときから変わらない。ここには狂気や変態が蔓延り、裸体が溢れ(もちろん鍛えられ過ぎていない)、絶望がその形を次々異なるものにしていく。まさに悪夢で、けれどそれは現実からかけ離れてはいない。地続きのところにある。すると夢が、悪夢の行く先が、まるで己のそれの変奏に見えてくる。他人事とは思えなくなる。いつまでも夢から抜け出せないのは、誰もが同じだとでも言うかのように。歪な夢が頭にこびりついて離れない。悪夢の体感こそが、ミッチェルの目指したものなのかもしれない。





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