ラバーズ・アゲイン

ラバーズ・アゲイン “The Lovers”

監督:アザゼル・ジェイコブス

出演:デブラ・ウィンガー、トレイシー・レッツ、エイダン・ギレン、
   メローラ・ウォルターズ、タイラー・ロス、ジェシカ・スーラ

評価:★★★★




 「愛」。あまりに身近過ぎて、もはや語られ尽くされた感がある。あるけれどしかし、それでもまだ愛を別の角度から描くことができると、人の数だけ愛は表情を変えると、アザゼル・ジェイコブスは教えてくれる。『ラバーズ・アゲイン』はどこにでも転がっているラヴストーリーに見えて、ちゃんと新鮮だ。

 トレイシー・レッツとデブラ・ウィンガーは「ゴール」が見えたカップルだ。夫婦仲はとっくに冷え切っていて、喧嘩すらない。互いに新しい恋人(浮気相手とも言う)がいて、一緒の時間はほとんどない。別の人間とデートすることを隠す(他の用事だと嘘をつく)ことが互いに見せるいちばんの思いやりという有様だ。ある日遅くなるはずのレッツが思いがけず早く帰宅した際のやりとりが可笑しい。ひとりを楽しむはずだったウィンガーは、「一応」レッツに一緒にワインを飲むか尋ね、レッツは「一応」それを受け入れる。流れるのは気まずいだけの時間。

 このどうにもならないふたりが、また互いを想い始めるから面白い。それもある朝、一緒のベッドで顔を突き合わせて目が覚めた、ただそれだけがきっかけで。寝惚けてキスをしたことがきっかけで。衝動的に求め合うふたりの画がなんだかスゴイゾ。レッツの脂肪やハゲが、ウィンガーのシワや弛みが、けれど愛の画として全然マイナスにならない。むしろ人間らしくて良い。

 愛の再燃、なんて大袈裟なものじゃないかもしれない。けれど、まだ想いが残っていることに気づいたふたりが、新しい恋人たちとデートする際、今度は想い合って当たり前の夫婦関係の方が浮気に見えてくるからややこしい。場所やシチュエーションが、それまでとはまるで違った意味を持つ可笑しさ。例えば、苦痛だったはずのふたりの我が家が、恋しいデートスポットになる。これを還暦前後の男女が魅せるのもハッとさせられる。

 ジェイコブスはつまり、愛が形を変えていく様を(分析の匂いを感じさせないまま)分析することで、そのアクションの面白さを追求していく。余白はたっぷり取られ、感情は緩やかに画面に広がる。人物を後ろから撮って敢えて表情を見せない撮影や、まるでパリを舞台にしたロマンティック・コメディのようなスコア(流れる場面と曲調に捻りあり)など、さり気なくテクニカルな部分も凝っている。

 このまま元の鞘に収まるのか…と思ったところで、息子とその恋人を登場させて、もう一波乱創るのも巧い。ウィンガーとレッツに、それまでの浮気がなかったことなんてさせないのだ。けれど…その眼差しは辛辣でありながら優しい。そして…愛はまた形を変えていく。ウィンガーとレッツのヴェテランならではの、役柄との距離の取り方が素晴らしく、愛の変貌、その味わいが格段に増している。愛に戯れる、ふたりはその術を獲得し、さらなるステージに行く。身勝手にも見えるそれが愛しく見えてくる。





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