グッバイ・クリストファー・ロビン

グッバイ・クリストファー・ロビン “Goodbye Christopher Robin”

監督:サイモン・カーティス

出演:ドーナル・グリーソン、マーゴット・ロビー、ウィル・ティルストン、
   ケリー・マクドナルド、アレックス・ロウザー

評価:★★




 主人公のA・A・ミルンは、くまのプーさんとその仲間たちを生み出した英国の作家だ。…となると、プーさん誕生秘話が出てくることは容易に想像できる。ただし、ハートウォーミングなそれを思い浮かべると驚くだろう。あのほのぼのとしたプーさんの世界とは違い、かなりほろ苦い空間が広がる。あのサセックスの地が、こんなにビターなんて…。タイトルは『グッバイ・クリストファー・ロビン』だ。

 映画全体が沈んだトーンなのは、ミルンが戦争帰りだからだ。彼はPTSDに悩まされていて、笑顔を見せることがほとんどない。音に敏感で、パニックを起こすと、周りにその痙攣が伝染する。その心を癒したのが、クリストファー・ロビンのモデルになった愛息であり、彼が可愛がっているクマの人形だった。プーさんの世界が生まれていく過程、それはこの映画で最も幸福な時間だ。

 緑豊かな田舎の風景。降り注ぐ優しい日差し。愛らしい小鳥のさえずり。澄んだ空気。父親と息子がそこを歩く度に詩情が顔を出し、そこにぬいぐるみが入り込むことで温もりが本物になる。ドーナル・グリーソンとウィル・ティルストンの創り出す気配は、それだけで人の心を癒す効果がある。

 問題はこの交流にヒントを得て出版された「くまのプーさん」が、息子の心を傷つけてしまう結果を招くという展開だ。本のヒットに気を良くしたミルンと妻のダフネは息子から子どもらしい時間の流れを奪ってしまう。これが強調された展開は、成長した息子から父親へ哀しい餞別の言葉を突きつけることを決して躊躇わない。

 ただ一緒にいたかったという息子の気持ちが無視されてきた事実は、おそらく観る者の心に予想以上の衝撃となって突き刺さるのではないか。それはプーさんの世界観をこれまで同様に楽しむことに罪悪を覚えさせるほどに哀しい。多分これは事実なのだろうし、その後フォローもされるのだけれど、決して戻らない子ども時代を考えると、何と言うか、プーさん好きとしては相当複雑な気持ちを抱え込むことになる。見たくなかったものを見せられた、そんな違和感。

 まことに勝手ながら、それならば、プーさんが生まれるまでに絞った話が見たかった。父親と息子の関係が深く掘り下げられるだろうし、少年の成長に大きな影響を与えたナニーの存在ももっと立体的にできたはずだ。この映画通りに話を受け取ると、ミルンの妻が酷く身勝手なだけに見えるのもどうか。充実のキャストも、その方が活かされたのではないか。プーさんがかける魔法の効きが悪く感じられてしまうのだ。





ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ