クワイエット・プレイス

クワイエット・プレイス “A Quiet Place”

監督・出演:ジョン・クラシンスキー

出演:エミリー・ブラント、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュープ

評価:★★★★




 決して大声を出してはいけない。物音を立ててはいけない。僅かな音が死を招く。…と書けば、どうしても「ドント・ブリーズ」(16年)を思い出してしまうわけだけれど、そちらと『クワイエット・プレイス』の印象がまるで異なるのは当然だ。襲い来るのがスーパージジイと奇怪なモンスターという違いは大きい(どちらも目は見えないが、聴覚が優れている)。けれど、空間の味わいこそが、より大きな相違点だ。

 そう、『クワイエット・プレイス』はメジャー映画。狭い一軒家内で収まらず、外の世界にも果敢に飛び出す。しかしこれは、ある意味賭けだ。アクションの場を増やせば息苦しさは減り(これは残しておきたいポイント)、大味さが増幅しかねない。ジョン・クラシンスキーの功績は何よりまず、空間をダイナミックに使いながら、緊張感を自在に操ったことだ。

 とりわけ音と沈黙の使い方の巧みさよ。クラシンスキーは三つの音の世界を創造する。ひとつは何もしなくても聞こえてくる自然界の音。主人公家族が音を立てまいと細心の注意を払う。最も硬直を誘う音の世界だ。次いで人工的に流れるスコアの音色。これにより前半は緊張を緩め(抑揚を作り)、後半は怒涛のサスペンスを畳み掛ける。そして最後に耳が聞こえない長女が常につきまとわれる全くの無音。この三つ目の音の世界を構築することで、ドラマにドライヴがかかる。しかもアクションを豊かにしながら。

 身近なものがサスペンスやエモーションを刺激する。スペースシャトルの玩具。ロケット花火。目覚まし時計。床から伸びる釘。懐中電灯。しかし、いちばんの盛り上げアイテム(という書き方は語弊があるか)は、母親のお腹に宿り、今にも生まれてこようとしている新しい命だろう。音を立てない生活はただでさえ難しい。けれど、出産なんて果たして可能なのか。演じるエミリー・ブラントの大きな見せ場だ。

 そして、これは突っ込み所でもある。ただし、不快さとは無縁、むしろ愉快な気分を誘うそれだ。物語と人物と世界観をきっちり描き込み、それでもなお出てくる綻び。それがチャームに変わる幸運。冷静に考えても考えなくても、裸足になったところで全力疾走すれば大きな音は出る。赤ん坊は都合良く泣き止んでなんてくれない。地下室への信頼感に説得力はない。でも、だから何だっていうのだ。

 テクニカルな部分にばかり注意していると、家族というテーマが美しく浮上するから侮れない。冒頭に起こる悲劇が原因で、ぎこちない関係にある家族の再生。父と母、長女と長男。それぞれが家族を思う気持ちが殺伐とした世界観の中に明かりを灯す。その按排が実に結構。セリフがほとんどないため、自然に匙加減が調節されたような気配。全く、どこまでバランスが良いのだ。





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