ブレス しあわせの呼吸

ブレス しあわせの呼吸 “Breathe”

監督:アンディ・サーキス

出演:アンドリュー・ガーフィールド、クレア・フォイ、トム・ホランダー、
   ヒュー・ボネヴィル、ディーン=チャールズ・チャップマン、
   ベン・ロイド=ヒューズ、エド・スペリーアス、スティーヴン・オドネル

評価:★★




 1950年代後半、若くしてポリオに感染、首から下が麻痺状態になる青年を主人公にしている割りに、『ブレス しあわせの呼吸』の序盤には胸躍るものがある。病が発覚したとき、彼を支えるその妻の態度が気持ち良いからだ。自暴自棄になる夫を人生のどん底から力強く引っ張り上げる妻。その頑張りに遂に己を奮い立たせる夫。その関係にはロマンティック・コメディ的味わいがある。女が少々強引に男に活を入れる。これです、これ。

 女を演じるクレア・フォイが見事だ。簡単に涙を見せず、けれど笑顔も最小限に抑え、しかしこの人と一生を生きると決めた覚悟で、夫を「振り回す」。フォイの大きな目、夫はその奥に広がる宇宙に吸い込まれるように蘇る。フォイは当時の衣装を甘ったるくなることなく、美しく着こなす。なるほど心地良い存在感だ。すると夫に扮したアンドリュー・ガーフィールドも輝き出す。この人に見合った男でいなくては。英国的皮肉も効きが良くなる。ロマンスの力の不思議。

 ただ、魔法の持続にはその他の技も必要だった。病院を出て自宅介護に入る主人公。これは当時としては前例のない療養のようで、次第に身体が麻痺してしまったときの介護ガイド的側面が強くなってくる。その後の医療の在り方を変えたとも言われる、自宅介護の選択。病院で死んだように生きるか、危険は伴っても外に飛び出すか。

 この際、主人公の周りが良い人で固められているのもむず痒いところ。まあ、執拗な偏見や差別なんか見せられたくはないものの、あまりに主人公の生き方を肯定的に受け入れる人ばかりなのは、何とも嘘っぽい。保守的な医療関係者たちが漏れなく理解のない人(もっと言うなら悪役的ポジション)として扱われる一方で、広がるこのハートウォーミングな世界。いくら何でも構図が単純過ぎる。

 加えて、未熟なアンディ・サーキスの演出。どうやら演技をしている時とは勝手が違うようで、サーキスは感情の描き方が一面的。哀しいときには哀しい表情しか、嬉しいときには嬉しい表情しか切り取ることができない。分かりやすく音楽が流れ続け、セリフが溢れ出し、登場人物たちとは常にフレンドリーな距離を保つ。すんなり見られても、後に残らない。

 …と行き着くのは、あぁ、やっぱりか、難病映画で頻繁に見かける「別れ」だ。厳しい病気にかかってしまった。けれど、自分は不幸ではなかった。君がいてくれたからだ。ありがとう。…という例の流れが、乱れることなく描写される。社会派の匂いが感じられるのも鼻白む。聞けば、これはプロデューサーの両親の実話を基にしているという。なるほど作り手が題材と適切な距離を守れなかった結果かもしれない。





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