ローマンという名の男 信念の行方

ローマンという名の男 信念の行方 “Roman J. Israel, Esq.”

監督:ダン・ギルロイ

出演:デンゼル・ワシントン、コリン・ファレル、カルメン・イジョゴ、
   リンダ・グラヴァット、アマンダ・ウォーレン、
   ヒューゴ・アームストロング、サム・ギルロイ、
   デロン・ホートン、トニー・プラナ、アマーリ・チートム

評価:★★★




 デンゼル・ワシントンがいつもとは随分違うイメージで出てくる。善玉を演じるにせよ悪玉を演じるにせよ、大抵スマートな佇まいのワシントンが、もっさりと冴えない風体なのだ。脂肪をたっぷり蓄えた肢体。手入れの行き届かないアフロ。デザイン性皆無のメガネ。サイズの合わないスーツ。それなのに妙に心地良い。バックに流れるトランペットの音色が、奇妙に似合う。

 ワシントン演じるローマン・J・イズラエルは人権弁護士だ。温厚で生真面目な性格はこの職業のぴったりのはずだけれど、どこか時代から取り残されたような気配を漂わせ、それが心地良さに繋がるのが面白い。要領良く社会を渡り歩く弁護士ばかりの世界ゆえ、その古風な匂いが余計に際立つ。今にも「不器用ですから」なんて言い出しそうだ。

 『ローマンという名の男 信念の行方』は主人公が選択の余地なく入った新しい事務所でふと悪事に手を染めてしまい、大きく運命を狂わせていく様を描く。ダン・ギルロイが見つめるのは、理想と良心の崩壊だ。それは主人公が何より大切にしてきたもののはずだった。それが僅かな気の迷いをきっかけに歪んでいく。要するに主人公の人生が悪い方に転がっていく。

 これはスリラー映画にありがちな展開なのだけど、ギルロイがより熱を傾けて見つめるのは、そこに潜むサスペンスではなく、良心の踏ん張りどころなのだ。人は変われない。これは悪人に対して良く使われる言葉だけれど、案外善人にもぴったりハマるそれなのではないか。主人公が悪事に手を伸ばし、けれど結局善人は善人のまま、その理想と良心は奪われない。たとえそれが崩壊し、形を変えてしまったとしても。

 だからこその、ワシントンだ。今やアメリカの理想と良心と言ったら、ワシントンかトム・ハンクスだ。そのワシントンが理想と良心を激しく揺さぶられる、そこにドラマが生じるのも当然なのだ。前半の昔ながらのワシントンも心地良いけれど、悪い方に転落し、けれどグッと踏み止まるワシントンもまた心地良い。眼差しの説得力がそこいらの俳優とは違うもの。

 ただし、だから、実際に命を狙われる羽目になる展開が浮いて見えてしまう。因果応報。悪いことをすれば悪いものを引き寄せる。そんなありきたりな格言にワシントンが引きずり込まれていくようで、悪い意味で落ち着かない。コリン・ファレルとのやりとりに捻りを加えたつもりのようだけれど、理想と良心の歪みを見せるにはお行儀が良過ぎるのではないか。ギルロイならもっとその傍らの闇に深く斬り込めるのではないか。





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