ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 “Borg McEnroe”

監督:ヤヌス・メッツ

出演:スヴェリル・グドナソン、シャイア・ラブーフ、
   ステラン・スカルスガルド、ツヴァ・ノヴォトニー

評価:★★★★




 ビヨン・ボルグとジョン・マッケンローなら、映画ファンにはマッケンローの方が馴染み深いだろうか。テイタム・オニールとのすったもんだで良く知られているはずだ。もちろんマッケンローの本業はテニス選手だ。『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』は1980年のウィンブルドン決勝をクライマックスに、当時4連覇中だったボルグと上昇気流に乗るマッケンローが、決着をつけるまでの旅路を描き出す。

 ポイントはボルグが「氷の男」、マッケンローが「悪童」と言われていたことだ。常に冷静沈着な試合運びをするボルグ。ゲーム中暴言連発、審判に注意され、観客にブーイングを食らうのが日常茶飯事のマッケンロー。このいかにも対照的なふたりを並べ、トップ選手が試合に挑む、その際の極度のプレッシャーと圧倒的な孤独を浮上させる。

 ただし、ここでのマッケンローは悪役ではない。確かに感情のコントロールが効かない彼は厄介者扱いされるものの、決して血の通わないモンスターではない。何しろマッケンローは密かにボルグに憧れを抱いている。ボルグはと言うと、マッケンローの血気盛んな姿にかつての己を見る。ボルグの少年時代をマッケンローのそれとして紹介しても、驚かれないのではないか。

 それを丁寧に読み解いていくと、テニス界を引っ張る一流選手ふたりの間に、熱い何かが流れ始める。言葉を交わすのは数えるほどしかなく、しかも素っ気ない。けれど、天才にしか辿り着けない境地にいるふたりは、互いの中に憧憬や郷愁を感じ取り、その生を実感に変えていく。そしてそれが、テニスというスポーツそのものの血流を立体的に見せていくのだ。そこに感動する。

 天才に扮したスヴェリル・グドナソンとシャイア・ラブーフの渾身のパフォーマンスが素晴らしい。冷静さを失わないボルグの苛立ち。常に叩かれ続けるマッケンローの哀愁。才能を認め合ったふたりゆえの精神的繋がり。その佇まいにレジェンドたちへの敬意が宿り、あたかも本人の魂が乗り移ったかのような凄みすら感じさせる。グドナソンなど、外見まで驚くほど似せている。

 試合場面の緊張感が完璧に再現される。一球一球に重みがあり、ラケットがボールを打つ度に、画面が揺れるのが分かる。それはボルグとマッケンローが魂を揺らしているのと同義だ。大胆なスローモーションや目に焼きつく構図、不敵な編集を畳み掛けながら、世紀の一戦が熱を帯びていく。テニスの見方を変える可能性すらある、センシティヴで、けれどダイナミックな攻めの演出。映画はそれに勝利する。





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