荒野の誘惑

荒野の誘惑 “Last Days in the Desert”

監督:ロドリゴ・ガルシア

出演:ユアン・マクレガー、タイ・シェリダン、
   シアラン・ハインズ、アイェレット・ゾラー

評価:★




 『荒野の誘惑』は聖書の中でも有名なエピソードを映像化したものだという。40日間、砂漠を彷徨いながら断食中のイエス・キリストに、悪魔が3つの誘惑を仕掛けたという、アレだ。空腹の絶頂にあるキリストにパンをちらつかせたり、崖から飛び降りることを強いたり、民の富を餌に自分を拝むよう言ったり…。

 映像化にも色々方法があるけれど、ロドリゴ・ガルシアはそのまま辿ることを避ける。あくまで聖書は下敷きであり、独自の話を構築する。ただし、ここに遊びと呼べそうなものはほとんどない。映画的な興奮も見当たらない。ただ、ひたすらクソ真面目に、ヨシュアという名前を与えられた男の心象風景を追う。砂漠を彷徨いながらヨシュアは呟く。「ファーザー、話しかけて下さい」。

 よほど聖書に詳しく、かつ熱心に読み込んでいる者なら、提示される映像の数々に思うことがあるのかもしれない。ただ、そうでない者には実に味気ない世界観だ。本当に岩と草以外何もない砂漠。そこでヨシュアはある一家に出会うものの、彼らと一緒にやることと言ったら、不毛な家作りと謎かけのような会話のみ。大抵の場面は無言で、けれど突然笑い出したり、叫び始めたり…。これで自己陶酔の表情でも浮かべてくれたら突っ込めるのだけど、それすら拒否するのだ。

 有難い聖書ベース。当然会話には裏があるだろう。そのまま受け取るだけではつまらない。その奥にあるものを読み取らなければ…。そうしてじっくり耳を傾けるものの、一向に響くものが見つからない不幸。選ばれなかった者は、報われない聞き取り作業に身を預けるものの、成果はなく、ただ疲れるのみ。

 ヨシュアと悪魔はユアン・マクレガーが一人二役を手掛ける。ほとんどオビ=ワン・ケノービなぼろ服に身を包んだマクレガーが、思わせぶりな会話を自身と繰り広げる。いくらテクノロジーに侵されていない砂漠が美しくとも、美術や衣装も味気ない中、聖書なトークに耐えなければならないのは拷問に近い。あくまでこれは聖書が身近にある人に向けた内容ということだろう。

 ダーレン・アロノフスキーは「ノア 約束の舟」(14年)を視覚効果だらけのとんでも映画に仕立てた。「マザー!」(17年)ではイメージの飛躍が暴走に繋がる事態を引き起こした。どちらも聖書を傍らに置く者には酷い結果なのかもしれない。ただ、この映画のように精神世界だけを深く重んじても、得るものは限られる。アロノフスキーならどう描くだろうなんて、思ってしまうのだ。





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