タリーと私の秘密の時間

タリーと私の秘密の時間 “Tully”

監督:ジェイソン・ライトマン

出演:シャーリズ・セロン、マッケンジー・デイヴィス、
   マーク・デュプラス、ロン・リヴィングストン、
   アッシャー・マイルズ・フォーリカ、リア・フランクランド

評価:★★★




 シャーリズ・セロン演じるマーロは疲れている。三人目の子どもが生まれたばかりだし、上のふたりはまだ手がかかるし、もちろん家事もこなさなくてはならない。世界一ハードな仕事である母親業、それをやりくりするのに精一杯。人に頼るのには慣れていないのよ。そう言うマーロの前に、夜だけの子守りとして現れるのがタリーで、彼女は言わば、現代のメリー・ポピンズだ。

 そんなわけで『タリーと私の秘密の時間』は母親たちへのラヴレターだ。給料が出るわけでもないのに、彼女たちはそれから逃れられない。大抵の母親はそれを受け入れる。夫のサポートまでする。でもたまには力を抜いても良いんじゃないか。夫たちよ、妻をもっと気遣いなさい。物語の燃料となるのは母親たちへの敬意だ。

 こういう話は説教臭くなったり、必要以上に精神論に走る危険を秘める。そこでジェイソン・ライトマンだ。ライトマンはベタベタの人情話の穴を軽快に避ける運動神経を持っている。会話の捻りとさり気なくエッジの効いた編集を畳み掛け、現代の寓話として、カラッとスピーディに突っ走る。物語を90分にまとめ、かつメッセージを浅過ぎず深過ぎず届ける名人芸。

 マッケンジー・デイヴィス演じるパーフェクトナニー、タリーが抱える秘密は、映画の禁じ手ぎりぎりの上に置かれるけれど、これを受け入れられるかどうか、それは観る側が試されているも同然だ。タリーが現れた理由、それについては十分過ぎるほど説明されている。物語につきまとう違和感も腑に落ちる。

 話の筋だけ追うと、タリーの完璧ぶりこそが鍵を握るように思えるものの、結局物を言うのは、どれだけマーロの現状に説得力を持たせられるかだろう。セロンの気合いの入った役作りが報われる。セロンは「モンスター」(03年)のとき以上に増量し(もちろん筋肉ではなく脂肪を蓄える)、母親業に疲労困憊の女の外見を創り上げる。

 しかし、そういう肉体改造よりも讃えられるべきは、疲れた姿のまま、魅力を取り戻していく、役柄の内面に直結する心理表現だ。終わってみれば、マーロが手にする輝きにも哀しみがつきまとうものの、それでもマーロはタリーに会って良かったと思わせる。もし仮にでっぷりと肉を具えない、いつものままの美しいセロンで登場しても、そのハートを伝えられたのではないか。今のセロンはそこまでの女優に到達している。そのきっかけが「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(15年)というのは少々意表を突くものの、そう言えばそちらで演じたフュリオサも、戦士としての姿の中に母性を滲ませていた。





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