心のカルテ

心のカルテ “To the Bone”

監督:マーティ・ノクソン

出演:リリー・コリンズ、キアヌ・リーヴス、キャリー・プレストン、
   リリ・テイラー、アレックス・シャープ、リアナ・リベラト、
   ブルック・スミス、レスリー・ビブ、キャスリン・プレスコット

評価:★★




 役作りのために、身体を痩せ細らせた俳優と言うと、「マシニスト」(04年)のクリスチャン・ベールを思い出す。ベールの役柄は不眠症が原因で痩せ細っていったけれど、『心のカルテ』のリリー・コリンズの場合はもっと直球で、拒食症だ。あの可愛らしいタヌキ顔のコリンズが、骨と皮だけになってしまう衝撃。コリンズが相当の覚悟を持って作品に臨んでいることが分かる。

 聞けばコリンズ、自身も拒食症に苦しんだ過去があるようで、なるほどこれまでと印象が全然違うのも当然、己の経験が演技に活かされているに違いない。その上、物語はと言うと、監督・脚本を手がけたマーティ・ノクソンの実体験を基にしているとか。拒食症がすぐ傍らにあった者たちが、この病の実態を世間に伝えなければ…という決意を胸に掲げての映画なのだ。

 もちろんその志は立派だし、事実、この映画から学ぶところは多い。「飢えているときが何より幸せ」で、エマ・ストーンがデブに見えて、これ以上太らないよう常に気を遣い、食べ物を吐くのが日課。そんな彼らの共同生活風景がメインになっていて、この病の苦しさは痛いほど伝わる。

 簡単に治る病気でないことも示される。単純明快に問題の発生源を特定することのない誠実さ。誰かに助けてもらうのではなく、自らを助ける意志を持つことの意味。頭で考えれば理解できるのに、心と身体がバラバラになってしまった彼らは、人生の美しさが嘘塗れに見える。拒食症に限らず、心の病の厄介な描写は十分だ。

 ただ、それらを提示したいがあまり、映画的な表現は単調になった感は否めない。拒食症そのものを伝えるのが何よりも大切で、そのためには芸術性は二の次になっても構わない。それが作り手のスタンスと見るのはさすがに乱暴かもしれないけれど、それでも振り返ってみれば、物語らしい物語は結局見当たらない。下手な脚色はこの病に対する偏見や誤解を招く。それを恐れたのではないか。

 精神障害の少女たちの共同生活を描いた「17歳のカルテ」(99年)との決定的違いはそこだ。物語を語ること。人物を伝えること。ゆえに自然に沸き上がる人生のうねり。それらが無視されるのは、あまりに寂しい。患者たちに個性が与えられず、向き合う医師も言われるほどに型破りでもない。拒食症の啓蒙こそを目指した結果だとするなら、映画に求めるものが根本から異なっているとしか言いようがない。





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