ベイルート

ベイルート “Beirut”

監督:ブラッド・アンダーソン

出演:ジョン・ハム、ロザムンド・パイク、ディーン・ノリス、
   シェー・ウィガム、ラリー・パイン、マーク・ペルグリノ、
   イディル・チェンダー、ベン・アファン、レイラ・ベクティ

評価:★★




 中東を舞台にしたCIA主導のアメリカの作戦を描いた映画というと、「アルゴ」(12年)が記憶に新しいものの、『ベイルート』の感触はそちらとはまるで違う。人を食った奇抜な作戦があるわけでも、豪快な娯楽性があるわけでもなく、ひたすらにシリアス。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が入り混じり、そこにパレスチナまで迷い込む1982年のレバノンが舞台…と聞いただけで、敬遠したくなるけれど、その通り、そのまま足取りは一向に軽くならない。

 そうなった理由は明白だ。今の時代に続く、流血を免れない社会情勢が背後にあるというのは当たり前として、事件の解決に当たる元外交官が背負うものが、やたら暗く重たいのだ。かつてその地で愛する妻を殺され、後見人になろうとしていた少年と離れ離れになり、積極的な社会との接触を断ってきた男。ユーモアなく真面目に事態に取り組む。

 筋立ても工夫はない。過去に傷を負った引退同然の男を引っ張り出すという、アクション映画やスリラー映画にはありがちな導入部。テロリストに誘拐されたかつての仲間を救い出すという平板なミッション。花を添えるためか、美しい職員がバディ的立ち位置に入る。歴史が複雑ゆえにプロットを捻らなかったと見ることも可能だけれど、中盤までは退屈な歴史書でも眺めている気分。

 面白くなるのは、誘拐犯の顔が見えてきてからだ。会話劇ばかりでなかなか出番のなかった肉体が動き始めるし、主人公が人質の男と敵の裏をかくやりとりを見せる。何より興奮させるのは、犯人のリーダー的存在の青年が、かつて面倒を見ていた少年の成長した姿であることで、そう、適度にメロドラマの要素が入り込み、頭でっかちな展開に蹴りを入れる。

 あぁ、だからクライマックスはもっと盛り上げられたはずだ。リアリズムに縛られた作り手は、派手な装飾を拒否、現実的なやりとりに終始してしまう。とりわけもったいないのは、かつては疑似親子関係にあったふたりの微妙な立ち位置に揺さぶりをかけられなかったことで、ほとんどメロドラマの成分が前面に出ることなく終わる。メロドラマは見せ方によっては愚かに見える危険を秘める。けれど、ここはそれに立ち向かう度胸が欲しかった。

 ロザムンド・パイクがほとんどジョン・ハムのサポート役に徹するのもつまらない。中東の地で、意外なほどフェミニンなヴィジュアルで登場、本当に話を飾るだけとは…。ハムがベン・アフレック的に大味な演技の人なので、もう少しピリリとした動きを見せるべき。彼女の動かし方を間違えたせいで、CIA内部の陰謀もちっともサスペンスに結びつかない。





ブログパーツ

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ