バトル・オブ・ザ・セクシーズ

バトル・オブ・ザ・セクシーズ “Battle of the Sexes”

監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス

出演:エマ・ストーン、スティーヴ・カレル、アンドレア・ライズボロー、
   サラ・シルヴァーマン、ビル・プルマン、アラン・カミング、
   エリザベス・シュー、ナタリー・モラレス

評価:★★★




 1973年、あるテニスの試合が行われる。一見プロテニスプレイヤーの男女による単なるエキシビションマッチだけれど、対戦するのがボビー・リッグス55歳とビリー・ジーン・キング29歳だから話は違ってくる。女子の優勝賞金が男子の僅か8分の1しかなかった時代。リッグスは自称「男性至上主義のブタ」で、キングは女性の地位向上を掲げるリーダー的存在だ。

 …というわけで、試合結果は、思考がストップしていなければ読めるだろう。『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の物語は男女格差の説明から始まり、全ては用意された結末に向かって、滞りなく進む。まあ、いかにも啓蒙的で単純化された嫌いはあるものの、別にバカにされた気分にはならない。

 キングが聡明な存在であることがくっきり描写されているからだ。試合は「男が女より優れている」ことを証明したいリッグスが提案する。キングは、自ら男性優位主義者であることを認めるリッグスは単なる道化であり、本当に目指すべきものがどこにあるのか、気づいているのだ。エマ・ストーンのしっかり者の個性が活きる。キングが本当に欲しいもの、それを言葉で説明したのは野暮だけれど、ストーンがそれを見失うことはない。

 ただし、予定調和な物語に陰影をもたらすのは、サイド描写にある。実はキングもリッグスも試合後、ロッカーに戻り、翳りある表情を見せる。キングなど、嗚咽を漏らすぐらいだ。その理由が探られるところに妙味があるのだ。キングはギャンブル癖で妻に愛想を尽かされたばかり。そもそも彼は女を馬鹿にしながら妻に対して頭が上がらない。キングは誠実な夫がいながら、美容師の女に惹かれてしまう。本当の自分、性の目覚めに困惑する。

 カレルもストーンも、実はそちらの悩ましさに演技者としての力をより発揮する。ふたりは時代が生んだふたりのテニス選手を、下衆でくだらない初老の男にも、単なるウーマンリブの象徴にもしない。ひとりの人間としての苦悩と行動原理を根底に敷いた演技。だから説得力がある。

 するとテニス場面の興奮が本物になる。時代を映し出したスタジアムと人々。ヘアスタイルや衣装、そして音楽。何より本物らしく見えるスタント。細部に手を抜かない演出が立体的に立ち上がり、歴史を変えた試合の一球一球から目が離せなくなる。究極的にアイデンティティーの問題に還っていく物語への共感がスッと身体に沁み込むのだ。





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