ザ・タウン

ザ・タウン “The Town”

監督・出演:ベン・アフレック

出演:ジョン・ハム、レベッカ・ホール、ブレイク・ライヴリー、
   ジェレミー・レナー、タイタス・ウェリヴァー、ピート・ポスルスウェイト、
   クリス・クーパー、スレイン、ウォーレン・バーク

評価:★★★




 ボストンは世界一銀行強盗、或いは現金輸送車強盗が多い街なのだという。ここでは強盗が家業になることも不思議ではなく、祖父から父へ、父から孫へと受け継がれていくというのだ。そのボストンで育ったベン・アフレックは、どうやらボストンと相思相愛のようだ。マット・デイモンと共に脚本を手掛けた「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」(97年)も監督デビュー作「ゴーン・ベイビー・ゴーン」(07年)もボストンが舞台。『ザ・タウン』でもボストンを舞台に、その過酷な現実を哀しげに揺らめかせる。

 物語上の主人公はアフレック演じるダグだ。彼とその強盗仲間、それを追うFBI、鍵を握る女の運命がじっくりと語られていく。ただし、アフレックはおそらく自分が揺るぎない主人公だと思っては演じていないし、そういう演出も採っていない。アフレックが考える本当の主人公は、ボストンの北東部にあるチャールズタウン、通称“ザ・タウン”という街そのものだ。重要な場面切り替えがある度にザ・タウンを空撮で切り取ったショットが挟まれ、その度にザ・タウンの存在を思い起こさせる。当然のことながらアフレックは、所謂名所になど興味は示さない。労働者階級の人々が暮らす、寂れた色合いの、孤独を痛烈に感じさせる街並を切り取る。時に重々しさに押し潰されそうになりながら、それでもアフレックはザ・タウンを愛する。実際、裏通りの寂しさも窓から見える風も血が流れる道の冷たさも、ただそれだけが胸に染み入るものを持っている。

 ザ・タウンの土の上には他の場所よりも強力な重力がかかっているかのようだ。真っ当な人生を目指しながらもそこから抜け出せないというのは、別にここに限ったことなんかではないだろうけれど、足元にまとわりつく粘着質なそのしがらみは、ザ・タウンの空気感の中で余計に存在感を増す。厳しい生活の中で必死にもがいても、人生の船の舵を大きく別方向に切ることは困難で、何をするにしてもまた元の場所に戻ってしまう、その過酷さ。ここでの強盗は生きる手段。その焦燥がジリジリと人の心を焦がしていくのが、なんとも生々しい。

 次の時代のクリント・イーストウッドになることを期待されているベン・アフレックの演出は、まだまだ若い。イーストウッドと比べるとせっかちで、早く物語を語りたいと忙しなくそれを転がしていく。特に撮影と編集のリズムが忙しくて、もう少し落ち着けと言いたくもなるのだけど、それでも音楽と呼応した画面の呼吸は気持ち良いし、アクション場面におけるダイナミックなカメラワークは痛快だ(狭い路地でのカーチェイスに注目)。これは多分、今のアフレックでなければ撮れない画なのだと思う。強引さもまた魅力に変換させてしまう若い力が溢れている。

 クセモノが集められたキャストの中では、儲け役とは言え、ジェレミー・レナーが凄味を利かせた見事な存在感。ジョン・ハムも手堅いし、ブレイク・ライヴリーも意外な表情を見せる。しかし最も感心したのはレベッカ・ホールだ。アフレックもホールを気に入っているようで、撮り方がとてもいやらしい。ホールが支店長を務める銀行に強盗が入る際の生足と唇の見つめ方がエロティック。露出しているわけでもないのに、妙に艶かしい。ホール特有の生活感と、それに伴うほんのりとした色香をきっちり引き出している。

 過去に訣別を告げるのは簡単なことではない。先人たちの人生が重なった重層的な街の中、それでも新しい人生を目指す男の姿が、目に焼きついて離れない。現実を知った者の覚悟が胸に突き刺さる。物語の余韻にいつまでも浸っていたい気分になる。





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