マッドバウンド 哀しき友情

マッドバウンド 哀しき友情 “Mudbound”

監督:ディー・リース

出演:キャリー・マリガン、ギャレット・ヘドランド、ジェイソン・クラーク、
   ジェイソン・ミッチェル、メアリー・J・ブライジ、ロブ・モーガン、
   ジョナサン・バンクス、ケルヴィン・ハリソン・ジュニア

評価:★★★




 黒人差別を取り上げた映画の中に、優れた内容のものがあることを承知の上で書くのだけど、出来映えに感心しながら、それでも多少の違和感を感じることがある。差別の現実を謳い上げ、糾弾すること、それが目的になり、物語を語ることが疎かになることが少なくないのだ。志の高さが映像表現の悦びを上回るがゆえの、小さな不幸ではないか。

 『マッドバウンド 哀しき友情』が優れているのは、何よりもまず、語ることが優先される点だ。1940年代のミシシッピーが舞台になり、当然差別問題が浮き彫りになる。ただそれは、物語を語る中に自然発生的に見えてくるものであり、差別の醜さそのものに狙いを定めない。ディー・リース監督は語り手としての姿勢を崩さないのだ。登場人物それぞれの物語を綴る、それが第一だ。

 加えてその綴り方が優れている。主人公を置かず、黒人白人、キーとなる人物の視線をいくつも用意する。つまりいくつもの話が同時進行で描かれていく。焦ることなく並べられた物語、その幹の一つひとつは細くても、いくつも重なれば次第に太く大きな一本のそれになる。キャラクターが立っていく。物語が多角的になる。解釈が狭まらない。

 語りにある種の崇高さを与えるのは撮影の功績だ。レイチェル・モリソンの撮影は屋内場面は暗過ぎるものの、アメリカ南部の匂いと湿気を丁寧に切り取る。緑が溢れる、一見美しい風景の中に宿る生きる苛烈さが、大変な迫力。優しい表情を見せながら、じんわり人々の体力を奪う、心の平穏を狂わせる、そんな空気が漂う。

 農園での暮らしの中にも当然、差別は迷い込む。あからさまな差別主義者の姿よりも、そうではない者の心模様が胸に焼きつくのが良い。善良な白人はもちろんいる。けれど、そんな彼らの中にも決して否定はできない差別意識がちらつくときがある。いや、それを差別と呼ぶのは過激過ぎるか。それでも黒人を下に見ている気配は拭えない。

 物語はどう考えても悲劇に向かうのではあるけれど、それをメロドラマ的にまとめるのは避けて欲しかった。戦争を絡めるのはまだ良いにしても、流産や殺人事件が顔を出すあたりから、物語の幹に不必要な枝が見え始める。そして、遂に起こる集団ヒステリー。それまで守られてきた物語優先の語りが、突如差別の糾弾を前面に押し出す違和感。序盤、中盤に守られてきた姿勢が雑に乱れる。映画を台無しにするような乱れではない。ただ、芸術が脇に押しやられるようで、無粋なものを感じるのだ。





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