エヴァ

エヴァ “Eva”

監督:ブノワ・ジャコー

出演:イザベル・ユペール、ギャスパー・ウリエル、
   ジュリア・ロイ、マルク・バルベ、リシャール・ベリ

評価:★★




 例えば、己の別荘に見知らぬ他人が勝手に入り込んでいたらどう思うだろう。いかなる理由があるにせよ、窓を割って侵入したその人物は、優雅にバスタブに浸かっているのだ。怒って当然のその状況下、侵入者であるその女は言い放つ。「だから何?出てって」。怪女登場の気配が立ち込める。

 怪女と思われたエヴァはしかし、その後魅力を発揮することのないまま、物語に立ち塞がる。イザベル・ユペールは何かを間違えたのだろうか。いや、ユペールは何も間違っていない。おかっぱなウィッグと真っ赤な口紅、そしてシワに優しいライティングの力を借りて、ユペールは男たちを虜にする。この際、ユペールの身体が、エラの主張の強い派手な顔(の作り込み)に較べて貧弱なのも、フリーキー的で良い塩梅。

 ただ、『エヴァ』とタイトルも貰っているこの女、案外ファムファタールの力が弱い。年齢不詳、おそらく結構な歳でありながら、男たちを次々魅了、ほとんど蜘蛛の女王的妖しさを持ちながら、ビジネスライクに動いていることしか伝わらず、意外なほど意表を突くことがない。とても分かりやすい女なのだ。

 だから、それを見抜けない作家役のギャスパー・ウリエルが本当にバカに見える。ウリエル自身は清潔感を保ったまま、中年ならではの翳りを湛え始めているのが悪くないのに(寄り眼は少々キツくなってきた)、それに見合わない駄々っ子的言動で通す。

 …とここまで書けば分かるだろう。ユペールとウリエル、フランスを代表する男女を主役に置きながら、ここには官能と呼べるものが全く見当たらないのだ。別に脱がないから…というわけではなく、ふたりの心が直線的で、交わることがほとんどないがゆえ、匂いも香らなければ、体温も上がらない。とりわけ惜しいのはウリエルの作家という職業の踏み込み不足。助かる命を放っておくくらいに野心があるはずのウリエルの欲望が、全然ユペールとの関係に影響を及ぼさない。

 終わってみればこれは、バカな男がどこまでも現実的な女に勝手に惚れ、勝手に自滅するだけの話だ。もしかしたらブノワ・ジャコーはこれを「男のロマン」なんて捉えているのだろうか。老いて官能の血が干からびてしまったか。そう言えば、エヴァの夫の動かし方も無味乾燥、実に他愛ない。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ